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青くて痛くて脆いのHrtのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.1
自意識を傷つけられた思い込みからくる明らかな悪意を推進力に、炎上を狙った告発がものすごく拡散されていった一方でしでかした事への後悔と贖罪と善性からくる行動は同じ発信者でもそれほど広まらなかったのはソーシャルメディアによる炎上構造の現状が映し出されていたと思う。自分が欲しいストーリーにしか食い付かないし、信じたい事しか信じない。その裏にある真実にはまるで興味がない。

独りで良かった、というのは本心ではなくほとんどの場合は誰しもが誰かを必要としている。
それこそその必要性の度合は「間に合わせ」くらいなことの方が多い。
その「間に合わせ」の時間の中で本当の何かを探し出すことは学生の頃の、あるいは勉強よりも重要な役割を担うのかもしれない。

吉沢亮、杉咲花ともに、どちらが本当のところは一体何なのかという緊張感を終盤まで維持する演技のバランスが良かった。
PCのディスプレイの明かりに照らされる吉沢亮の表情や、屈託なくもどこか後ろ暗さが垣間見える(様に演出された)杉咲花の笑顔にそれを感じた。
サークルの幹事を務めるテン役清水尋也のミスリード感も納得できる配役。

構成も考えられていたと思う。
特に前半が終わり、ある事実が急に観客に突き付けられてからのスピード感。
どんでん返しという程でもないにせよグッとスクリーンに身を乗り出すきっかけにはなった。
その後でさらにひっくり返す事実が他者から伝えられるシーンがあるが、直近で言うと『ジョーカー』にも通ずる一人称の信用出来なさを想起させる。

「嘘」では無かったと思う。
こじれて膨れ上がった思い込み、くらいのものだと思う。
独りで抱え込んだからこその。
独りで抱えたが故に、大学生活の煌びやかな部分を詰め込んだ様な「モアイ」の充実さと自分とを見比べてしまったのだと。
独りでいることで周りと浮かないようにするためではなく、そうした相対的な劣等感を抱え込まないためにも、時には「間に合わせ」の誰かを必要とするような気がする。
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