blacknessfall

ミッドサマー ディレクターズカット版のblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.9
劇場版観てるしけっこう謎めいたとこあったからデレクターズ・カット気になってたよ。でも、上映時間3時間近くあるしなかなか観れなかった。長い上に魂飛ばしにかかってくるやつだから時間と体力に余裕のある時じゃないとね。あの陽性の狂気には耐えられないよ。
しかも、未見のシーンでさらにヤバいのがある可能性もあるしさ。

と、かなり身構えて観たけど、そんなに劇場版と変わらなかった。特にゴアでグロいシーンはまったく同じだったから拍子抜けした。丸々1つの儀式が追加されてたけど、極めて穏当なやつで同じような儀式が実際にあっても何もおかしくないような牧歌的な民話風なやつ。
川の女神に捧げ物するために捧げ物に見立てた子供を川に投げ入れるふりをすると言う内容。唯一の夜の儀式。捧げ物に付いた海藻のような飾りが後に殺されたコニーって女の子の遺体に付いてるから、実はこっそり投げおとして溺死させたことの暗示になってる。劇場版では何であんなのが付いてるのか分からなかったけど、その謎は解ける。
でも、これはカットして正解だった気がする。他の儀式と比べて不穏な空気が薄いし、何より夜なんで白昼の狂気にそぐわないから。

あとは登場人物達の会話が長めになっている。
これで分かるのは主人公のダニーの彼氏のクリスチャンが劇場版よりクズ野郎だってこと。
ダニーの情動不安定に付き合うのにかなり嫌気がさしていながら他の付き合える女性も目下いないから惰性でケアしているのが強調されていた。ダニーが頼ってきた時はかなりおざなりにするのに自分がちょっと置いてかれると拗ねる。誕生日を忘れてたことをダニーに責められ言い訳して口論になり不機嫌になり、結局彼女が謝って態度を軟化させる。「おまえみたいなメンヘラを相手にしてやってんだから感謝しろ」的な高慢さが目立つ。
比較民俗学の論文を書いてるジョシュに共同研究を持ちかけるんだけど、このテーマを勉強してるジョシュと違い、クリスチャンはホルガ村の奇習を見て、これなら目覚ましい成果をあげられるって功名心だけでいっちょ嚙みしようとしてるのがジョシュとの会話で明らかになる。

クリスチャン、よくいる欲望はあるけど地道に努力することは嫌いなくせに実利だけら誰よりも欲しいって言う利己的なヤツにしか見えない。劇場版でもそんな雰囲気はあったけどデレクターズ・カット版ではそれがハッキリ分かる形になってる。
村の女の子とのセックスも最初拒むけど、これはあくまで儀式だからと言われてあっさりヤル気になるし笑
劇場版ではダニーに見捨てられ熊の生皮着せられて焼かれるなんてかわそうだなって思ったけど、これなら焼かれても仕方ないと思える笑

デレクターズ・カット版で見ると曖昧だったラストがダニーに取って過去の苦しみを立ちきり、新しい生を授かる救済だったと分かる。

まあ、でも、どっちか好きかというと劇場版かな。曖昧な部分が減るとオーラも減ってしまい、引っ掛かりもなくなり良くも悪くも消化されてしまう。
blacknessfall

blacknessfall