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街の灯のnagashingのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.0
一人ひとりの動きがとても細やかで、どこを見たらいいのかわからなくなる。全体は捉えきれず、部分に注目すれば肝心な流れを見逃してまう。
スラップスティック中心のロングショットが多くを占め、チャップリンのクローズアップは最後のみ(だったはず)。劇中の少女とおなじく、そのときが彼の顔を間近に見る初めての機会だ。そこには、しわ深く、覇気に欠けた、挙動不審な中年がいる。あの軽やかで躍動的なドタバタを繰り広げた男と同一人物とは思えない。この身体表現の幅広さがなによりすごいと思う。ボクシングのシーンなんて、完全にデフォルメされた血の出ない漫画的身体だったのに、エピローグではいっきにリアリズムへと接近してしまう。子どもたちにぶつけられる小石すら痛々しい。
少女の最後のせりふの訳は、「あなたでしたの?」より「あなたですの?」なんじゃないかなあ。喜び以上の彼女の戸惑いが、あのラストを切なく深みのあるものにしているのでは。過去形だと完全に受け入れちゃってる気が。
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