バリカタ

ハッピー・オールド・イヤーのバリカタのレビュー・感想・評価

4.0
タイの映画っていうとトニー・ジャー、マッハ!!!、トムヤムクンのイメージしかない私にとっては本作品、「びっくり」しかありませんでした。

繊細に流麗に、心がヒリヒリしつつも染み入ってくる。
「静」のタイ映画って良いのですね。勉強になりました。

ずーっと誰とも関わらず、関係性を持つことなく生活することは困難ですよね。誰かと何かを共有しながら生きてます。時間・場所・物、、様々です。
そして、思い出なんちゅーもんができちゃいます。
きっと対象は色々ありますが一緒に関わった人への気持ち含め「情」みたいなものが生まれて移っていくのでしょうね。

主人公のジーンは非常にシンプルに見える女性。
ミニマルな生活を求めていますが、なんだか感情もシンプル。
ミニマル生活始めるための断捨離を開始すると、ことごとく「感情が絡むと面倒臭い」って。彼女は感情をできる限り排除して生きてきたような感じ。

僕の解釈ですが、本作はそんな彼女が「情」が移っているであろう物の整理をしながら、図らずとも「物」を共有した人と接してその「物」や「人」から自身の「感情」取り戻して行くお話なんだと思います。

そんな彼女はなぜ感情を捨てて、いや感情を面倒と言うようになったのか?
心に大きな傷を負い、感情を持つことやそれに関わることを避けてきたのではないでしょうか?
それは自身の気持ちをただただ、誤魔化して蓋をしてきただけ。
そして「無かったこと」にしてきたのでしょう。
本当は嬉しいのに、本当は悲しいのに、本当は会いたいのに、本当は好きなのに。

最後にピアノで奏でるあの曲は、思い出の曲でもあり、感情を捨てざるを得なくなった理由の人との思い出でもあり、また自分自身の帰ってきた心への曲だったのではないでしょうか?
だから思い出を、自分にとって煩わしかった思い出の物ををそっと持って行ったのだと思います。

嬉しい、苦しい、悲しい思い出とともに生きていくと決めて。

なーーーーんて、全然違うかもしれません(笑)
ですが気持ちの機微を丁寧にやさーしく描いた良作です。
あぁ、パンフレット買えばよかったなぁ。
作品のバックヤードを知りたくなってしまった。