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ハッピー・オールド・イヤーのmayaのレビュー・感想・評価

3.4
チュティモンさん、バッドジーニアスでも最高だったけど、追い縋る周囲を切り捨てて孤独に自力で何かを掴み取る役が本当に光る。
途中まで、こんまり出てくるし、過去を掘り返して精算しだすし、あれ、「過去と向き合おうって話だったら嫌だな」と首を傾げていたが、結末で、全てにナタを振るい、責める声に耳を塞ぎ、親友に体裁の良い嘘をつくことで、彼女が前へ進むために孤独を選択したことがとても嬉しかった。彼女の多くは語られない過去や人生を最も反映しているだろう彼女の建築デザインがミニマリズムなのは、彼女自身が研ぎ澄まされた孤高にこそ美しさと安寧を感じる人だからなのだと思う。
「他人の気持ちを考える大切さ」を親友も元彼も彼女に訴えて、彼女も行いを改めようとするけれど、結局親友も元彼も誰も彼女の孤独には寄り添わない。唯一、「父の不在」という同じ孤独を分け合う兄だけが、同じ孤独だけは抱きしめあって分け合うことができる。「他人の気持ちを考えてよ」は、「私/俺の気持ちを考えてよ」という主張に聞こえて、それは身勝手には当たらないの?と憤りを感じてしまう。「罪悪感を一緒に分かち合ってよ」なんて最悪な口説き文句と、彼女に影響されて断捨離し始めて「君の真似だよ笑」とか言ってくる気持ち悪さ、ミーは別れて大正解だし(忘れられない元カノのTを今カノに着せるってなんだよ、気持ち悪すぎる)、だからお前は運命じゃないって言われるんだよ、って感じですね。父親も元カレも、過去を掘り起こさなければちょっとした未練と思い出で終わった人たちと、「なぜ袂を分かったか」をグロテスクに想起させる結果になっているのはとてもリアルだと思う。
大事な人に憎まれても、心を閉し、自分の都合を貫くという彼女の覚悟は、間違いなく大きな前進だと思うし、すごく共感できる結論でした。
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