TERUTERU

写真の女のTERUTERUのレビュー・感想・評価

写真の女(2020年製作の映画)
3.7

[ 写真の女 / Woman of the Photographs ]


オンライン試写会にて鑑賞!coco映画レビューサイト様有り難うございます!

 サイレント映画とインパクトある映像表現を組み合せた現代のヒューマニズム映画。
主人公は言葉を発さない孤独に生きる50代くらいの写真家の男性。その人以外の会話はもちろんあるのだが、きっと言葉がなくてもこの映画の素晴らしさは理解できるはず。視覚を研ぎ澄ます程、日常的あるいは真実しか聞こえない。

 あとから音声を付けたのだと思うけどたまに動作とのズレを感じる時もある。音声のズレは本編には関係ないと思うが、そういえばこの映画には串田壮史監督のインタビューによると表と裏の「ズレ」によるテーマがあるらしい。表のテーマは「写真撮影後の加工レタッチ」。そして裏のテーマは、写真という事象と密接に関わる「時間」という現象。表のズレはわかりやすく自分の本当の顔と加工された美しく出来上がった「実と虚」のズレ。裏のズレは主人公の父親から継いだ写真館という50年時代がとまった空間の時間。それと主人公が出会う女性「キョウコ」には常に自身の写真を投稿しては過去の栄光に縛られる「時間のズレ」がある。

 写真を舞台に人間性のズレが見えてくる。ズレを利用する事でその人にとっては幸せであり、独自性な美しさになるのだろう。加工が決して悪いわけでもない、過去に撮った幸せそうな顔を遺影に使う事は悪いはずがない。使い方次第でその「ズレ」は人を幸せにする。これが現代の技術によって「ズレ」を利用する人類である事。またそれを拒む者もいるがその思想に「昔と今」という時間のズレが存在する事を御忘れずに。
 カマキリはその美しさの「ズレ」を利用した捕食者にすぎなのだろう。

 なんとなく串田壮史監督初長編映画は「ズレ」を利用した私たち人間性の歪みで弄ばれている感覚だ。監督こそ捕食者、令和のカマキリだ✨

 インディーズ映画にて素晴らしい邦画作品!今後の串田壮史監督の活躍にご期待ですね!芸術的な作品でありマニアック差をも感じる。上映館も限られているのでお近くで上映する所があれば是非いってらっしゃいませ👋

2021/№002オンライン試写会
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