TERUTERU

市子のTERUTERUのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.1

[ 市子 ]


私が知っているのは、
ほんのわずかな市子

そう、ほんのわずかで
これ以上知っても自分の無力差を痛感するだけなのだと。

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“杉咲花”さん、
もはや役者の賜物、演技力は神降ろしでもしたのか?というくらい今作の主人公「市子」にしか見えない。
市子が消えたどころか、中の杉咲花さんはどこに行った〜!?と言った所でしょう。
日本アカデミー賞では主演女優賞は『怪物』の“安藤サクラ”さんでしたが、その作品が無ければ間違いなく彼女が獲得していた事でしょう…個人的に。


終盤は感情がぐちゃぐちゃになりそうなくらい市子の抱えている過去に押しつぶされそうになる。
彼女と同じ境遇の者はいたとしても少ないだろう、あまりこの言葉は使いたくないけれど親ガチャでいう最悪なハズレをひいてしまったのでしょうか。あの結果になってしまうのも仕方ないようで決して世間一般的に許される行為では無い。もっと早い最初の段階で警察に出頭していたらきっともう少し生きやすい世界の下で市子は日々を過ごせたのだろう。
次の母の元恋人を殺害も言い逃れることはできないが、もし庇う者が無ければ道を外すことはなかったのだろう。
一度罪を背負い逃げ続ける者に生きていく居場所は少なくなる。幸せな時でも過去の罪は追ってくるかのように。


ただ、“若葉竜也”さんが演じる現在の市子の彼氏だった「長谷川」に対する思いは本心で愛していたのだろう。自身の過去を知らない彼には罪背負わなくて良いように。
市子の選択はまた逃げるを選んだかもしれない。ただ愛する人へ助けてではなく人間関係を断つ事を選んだのは良き選択を選んだ進歩なのでしょう。もう巻き込まないように自身の罪を反省するかのように。

自身が抱える罪の重みを知りながら彼女は人生を歩んでく。


辛い選択だが自分から出頭を選び世の中へ共に暮らせることが出来る、これを願う事でしょう。
その時は昔の事を知っても関係なく話を聞いてあげ優しく振る舞いたい、よく頑張ったと。



断つ事のできぬ過去
自由になる為にとった行動は
自らの人生を捧げると同様な罪深き行い
追ってくる罪に対して私なら許せる、許せないではなく、過ちとの向き合い方を考えさせる映画でしょう。
人生に幸あれ。


2024/No.014
TERUTERU

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