TERUTERU

哀れなるものたちのTERUTERUのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7

[ Poor Things / 哀れなるものたち ]


美学という人体実験
慈愛が生む哀れは無慈悲の特効薬
真実に目を背け偽りに溶け込むのは進歩の停止。
精神と肉体の感情の回路を切れば
苦痛も代償も厭わない哲学の挑戦者
間違いは除去、治せる所を処置
傷という悲しみを断ち切る為に
学びを加護に、慈愛を込めて世界にメスを。

_________________________________

ベラァァァァァ!!!!
今年のベストが決まってしまうよ(TT)

『哀れなるものたち』

見てきたけど本当に良かった…
ラストの爽快さが素晴らしいくらい綺麗すぎると同時にその内面の歪さはこの不条理の世界を物語っているのでしょう。『フランケンシュタイン』を題材に女性版を演じる“エマ・ストーン”のその快演は今までの作品では見たことない大胆にかつ女優の美しさだけではない演技という圧倒的な実力差を獲得したでしょう。アカデミー賞主演女優賞は有力ですね。


“ヨルゴス・ランティモス”監督の魚眼レンズ撮影が過去作同様、物語へ覗き込み映画の見方はクセになる。更に撮影方法が凄いところまず先に出来上げたのは音楽を完成させ実際に流しながら演技を行なったという裏話。だからリズムがシンクロしているみたいに意気のあった演技ができている。またその音楽も謎めくような異世界を感じさせるように聞こえる。それでも不快とは思えないフワフワとした落ち着いた曲で好きになる。サントラ欲しくなる✨


本作の「ベラ」の成長物語。見た目は大人頭脳は子供の逆コナンだが、世間を知らない彼女にとって外に出る意味は管理から抜け出す、快楽を得るためだったかもしれない。けれどそれよりも世界の美しさ残酷さ、冒険していく中で理解して喜んで前へ進んで社会主義者へそして更に上へ挑戦して行くことができるのは、ベラというフランケンシュタインではなく本来持った人の美しさに見える。

またベラは当初、「死」から始まっている。
そして実験という程で治してもらい「傷跡」が残る。歩き方は産まれて初めて立てるようになった赤子だ。
管理されていた生活を抜け出し冒険へ
そこでも彼女は傷つきながら成長していく。
むしろ輝きを取り戻しながら。
最終的にはもはや「生きている」かのように普通に歩き、もうどこにも実験体という一面は見えない「人間」だ。
でも彼女の精神も肉体も傷だらけの筈なのに堂々として椅子に座ったり立っている。
もうベラにとって世界へ挑む反逆者、理想を抱く闘志は傷が物語っている。
最初の一歩が重要なんかじゃない、
傷ついて、傷つかない様に
探求心と理想を抱き忘れず
哀れなる者たちは挑んでいく。



本当に良かった…
狡猾で無慈悲、エロスで汚く、残酷な一面なシーンだらけなのもしれない。
それでもあのエンディングに魅了される。
見事なエマ・ストーンの怪演、衣装の素晴らしい事、そして内容詰まった人が進歩する意味を物語っていました。
もう一度観たい😌


2024/No.009
TERUTERU

TERUTERU