月うさぎ

ザ・ビートルズ:Get Backの月うさぎのレビュー・感想・評価

ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)
5.0
溢れる才能、音楽への愛、魅力的な個性。
Fab4は永遠です。(注:このレビュー超長いです)

眼を見張る程クリアになった映像は今、目の前に彼らがいるかのよう❤️
新曲で特番を作る。制作過程からコンサートまでドキュメンタリーを撮影。その間3週間。
…なんてそもそも無茶に決まってる。

でも僕らの成功も、始めた頃はもっと無計画だったよね、と言うのはジョージ。

ずっとビートルズが好きでした。
今でも私のアイドルはジョージなのよ。
ファッショナブルすぎて惚れ直さずにいられない🥰
皆さんの熱いレビューはそれぞれもちろん素敵ですが、今回私はジョージ目線でレビューさせていただきます。

理想主義で夢がデカすぎる我儘ポール、成り行き任せでセッパつまらないと本気出せないジョン、いい人オーラ全開でも発言はほぼない(ほっといていいとまで言われてる)リンゴ、とにかく音楽への情熱が生真面目で現実も見ているジョージ。

こんなにもバラバラだけれど強い絆があればこそ、自分を自由に出せるんだよね。

これはポールの作品、これはジョンの作品と言われてそう思って聴いてきたけれど、LET IT BEもThe Long and Winding Roadもこのセッションの中で何度も何度も試行錯誤や歌詞の変更をへて時間もかけまくって最終形へと導かれていた。
紛れもなく『ビートルズ作品』なのだ。
プラス「ビリー・プレストン効果」
ふらりと遊びに来たビリー・プレストンを皆んな大歓迎

彼のエレピやオルガンの華麗なメロディが加わるや否や3人の反応が変わる。セッションは一気に加速。天啓が下されたかのように曲が完成へと仕上がっていく。あれだけ悩んでいたのに?!ビリー、あなたは天使なの?!

この場面でもジョージはビリーの待遇についてきちんと考えている。ホワイトアルバムでクラプトンを参加させた時、所属レコード会社が異なる事で彼をクレジットさせられなかった事をきっと気にしている。だから今回はビリーの名は参加ミュージシャン扱いになっている。

それどころか、ビリーをビートルズの5人目にするかという話まで出ていて面白かった
ジョージったら
「ディランも誘おう 皆んな入るぞ」
なんて言い出したりして
とても明るい
こういう会話、きっと日常なんだろうな。
解散するなんて1ミリも考えられない雰囲気

ステージでプレイするのは好きなんだ
とジョン
そう。
ルーフトップ・コンサートでのジョンはあり得ないほどカッコいい

映画「レット・イット・ビー」では悪役みたいだったポール。この映画で救われたと語っていた。僕らは楽しんでいたんだ。間違いなく。そうだったんだね。ファンも救われましたよ。

でもやっぱりポールは少々ウザい。

ビッグでソフトに?
細身のズボン(ドレイニー)みたいに?
そのイメージでギターを弾けって言われてもさー! 
それでジョージに自由を与えたって…何それ?でしょう?
そしてゴールのないマラソンのように何十回もポールのピアノ曲を演奏されられる訳で
ジョンも終いには「俺を解放しろ!」と叫んでたわ😅

ジョンとジョージの後のソロアルバム曲Gimme Some Truth(1971)も
All Things Must Pass も、すでにできていた。ポールがあんなに時間を独占しなければビートルズ曲として完成できたはず。
特にジョンの曲はビートルズアレンジで聴いてみたかった。

*Jealous Guyが「on the road to marrakesh」
だったのにはビックリで笑える。
これは時を待って、ジェラス・ガイとして完成すべきなので不問とします。

皆で一緒になってやり楽しむことだ
フィナーレにライブショーかステージをやりたいポール

そしてついにギリギリにアップルのルーフトップというアイディアがもたらされ、
リンゴとジョンはやる派
ポールとジョージは否定的

その理由もまちまちのご様子

ジョージがジョンにソロアルバムを作りたいって相談してました。
ポールがランチで外出している隙に…
ジョンは、気持ちはわかるけど今ビートルズとしてLPを作ろうって時にか?って言ってる。
ジョージは全員が個別に活動できればいい
そうすればビートルズがより長続きすると思うし…と語る。
ビートルズをpreserveできると考えている
ジョージの考えは正しいと思う
実際にそうあれば良かったのに
解散が回避できたはずなのに

その時ヨーコはgood ideaと賛成している
お邪魔虫もたまには役に立ってくれてた

ここで確実に言えるのはジョージはビートルズの解散なんて全く考えていないという事
ジョージは自分はビートルズを辞めるとは言ったけれど、自分の代わりにギターを弾く人を入れろと言って去った訳
君らとは縁切りだとも言っていない
腹は立てていたかもしれないけれど、決してキレても怒ってもいない。静かな態度だった。
説得に応じて復帰してアップルスタジオ入りしてからの彼は、普通にリラックスしてスタジオにいるし、むしろご機嫌。演奏したい。ギターを弾くのが楽しいと語る。曲のアレンジにも積極的に関わっているし。数日前辞めるって言って出て行ったのは誰なんだ?って感じ(笑)

ソロアルバムを出したいというのもビートルズとして発表できない曲が多すぎるという実際問題からだ。
ポールとジョンの圧倒的な存在感を前にしてはやむを得ないでしょう。
曲の仕上げ方を見ていてわかった。
ポールとジョンの阿吽の呼吸、共感するテンション、おふざけのパワーまでピッタリだ。
それにはジョージだって割り込めない気分になっただろう。

そして完全主義のポールのしつこすぎるまでの曲へのこだわり。一体彼は自分の曲にかける時間の10分の1でもジョージの曲に割いただろうか?頭の良いジョンはその事に気がついていた。映像なしの隠しマイクが真実を教えてくれる。すごい!なんなのこの奇跡は?!

GET BACKは4人の間で醸し出された曲だった。ポールの頭の中で勝手に湧いてきた訳ではなく。
無から誕生し成長する曲の姿を目の当たりにできるだけでも、ドキュメンタリーとして完璧だと思う。

ジョージの言うように、バンドとソロの両立ができたなら、と惜しまれてならない。
家族以上の親密さで結ばれてあまりに近い4人だったから、ほんの少しの距離でも隔絶な距離に感じられたのだろう。
ブライアンというパパ役の兄貴が亡くなって誰も彼らに「ダメだ」を言える人がいなくなってしまった事が最も大きい。
本来自己主張の強い個性的な人間なんだもの。
しかもまだみんな20代だよ。
ジョージなんて25歳よ!
 
ライブの後、屋上でやるのを少し嫌そうにしていたジョージが「次はロンドン制覇だ(take over)」と言っているのがおかしくて、でも悲しい。
これがラスト・ショーだとは、この瞬間誰も思っていないのだ。


バンドのドキュメンタリー映画じゃない。
ジョン・ポール・ジョージ・リンゴの生きた時間を切り取ったタイムマシンだよ。これは。
月うさぎ

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