GreenT

キング・オブ・スタテンアイランドのGreenTのレビュー・感想・評価

1.0
高校中退のスコットは、24歳のニートくん。シングルマザーのマージーに依存して生きている。真面目な妹のモードは無事に高校を卒業し、大学に入るために家を出る。

舞台になるスタットン・アイランドは、どうもニューヨーク・シティの郊外らしくて、郊外特有のなーんにもない、若者にはとてもつまらないところに描かれている。前に感想を書いた『Big Fan』という映画も舞台がスタットン・アイランドなんだけど、これの主人公も未だに母親と暮らす「ルーザー」。ニューヨーク・シティに近いから、「勝ち組」はみんなニューヨークに出ていって、残るのは「負け犬」か年寄り、みたいな場所なんだろうか?

スコットとそのニート友達の生態が面白おかしく描かれているのですが、他の子が「俺はこういうライフスタイルが好きなんだ!」とマリファナ吸ってTVゲームしているのに対して、スコットはADHDやクローン病を患っているとか、7歳のとき、消防士だったお父さんが勤務中に殉職したことがトラウマになっているとか、「スコットがこんな風なのは彼のせいではない」という空気がちょっと漂っている。

スコットは幼馴染のケルシーとセフレなのだが、誰にも言ってない。ケルシーは、スコットのガールフレンドになりたいんだけど、スコットは「俺は精神病かもしれない。君を傷付けたくないから、シリアスな関係になるのは止めよう」と言う。

じゃあセックスもするなよ!

なんかこういう言い訳がましい感じが・・・・

主人公のスコットを演じるピート・デイヴィッドソンは、サタデー・ナイト・ライブなんかにも出てる人気スタンダップ・コメディアンで、モトリー・クルーの伝記映画『ダート』にも出ている人なのですが、この映画は自伝的な映画みたいで、ピートのお父さんは本当に消防士で、911のときに出動して亡くなったんだそうです。で、本人も本当にそれがトラウマで、自殺願望があって大騒ぎになったこともあったんだとか。

この人とジャド・アパトー、あともう一人コメディアンの人が共同脚本しているので、かなりピート・デヴィッドソンの「セルフ・セラピー映画」「自己満映画」という感じは否めない。

また、出演者にコメディアンが多く、セリフをきちんと考えて演技すると言うよりも、コメディアン同士のアドリブの面白さをキャプチャーしようとしているような感じがする。例えば、スコットとケルシーのシーンなんかは、ピート・デヴィッドソンがアドリブで喋ったことにケルシー役の娘がウケちゃって笑っちゃった、みたいなシーンを敢えて使っているような。

私は個人的にこういうのは手抜きって感じがして好きじゃない。こういうシーンがハマる可能性は100回に1回くらいなんじゃないのかなあ。

スティーブ・ブシェミも出ているんだけど、この人『レザボア・ドッグス』が大ヒットする前まで、本当にニューヨークの消防士だったんだって!それでの友情出演なのか、スコットのお父さんを知っている老消防士の役なんだけど、ブシェミがスコットのお父さんのぶっ飛びエピソードをみんなに語るシーン、これもアドリブだと思う。なんか、カメラ回しっぱなしにして、男たちが与太話をして笑っている雰囲気を撮りたいんだろうけど、ブシェミに「なんか面白いこと言わなきゃ!」って気負いを感じちゃうし、周りの人も「笑わなくちゃ!」みたいなプレッシャーを感じて、かえって自然じゃないと思った。

まあ一応コメディアンたちだから面白いところもいくつかあるんだけど、どっかんどっかん笑えるってんでもないしなあ。

スコットのお母さんを演じるマリサ・トメイがめっちゃ老けていてショック!動きが年寄りっぽいし、笑い声とか笑い方とかもめっちゃババ臭いんだけど、あれは役作りでそうしているのか、本当にもうあんな感じなんだろうか?『フォー・ルームス』で25年前のマリサ・トメイを観たばかりだったからショックは大きい。

そういえば、今日ヤフー・ニュースで、「ベイ・シティ・ローラーズのイアン・ミッチェルさん死去」って出てたな〜。あーやだやだ。

お話は、ニートして安穏と暮らしていたスコットが、お母さんに彼氏が出来たことで自立を強いられるハメになるんだけど、嫌っていた彼氏も消防士で、消防署の人たちと触れ合う中でだんだん大人になっていく、という話にしたいんだろうけど、ピート・デヴィッドソンが実体験した話とか、「こういうシーン入れたら面白いよね」みたいのを継ぎ接ぎしただけって感じがする。なんかやたら評価高いんだけど、雰囲気だけであまり実質は伴ってない感じがした。
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