このレビューはネタバレを含みます
激しく泥臭くよりどりみどりのアクションは前作までを踏襲・凌駕した紛う方なき集大成であり、このスクリーン一杯の迫力と格好良さを感じる間"この時よ終わらないでくれ"と願うばかりだった。
依然として地べたを這いつくばりながら延々奮闘のキアヌが魅せるアクションは更に多岐に渡り、特にヌンチャクを華麗に振り回す姿には畏敬の念が溢れ止めどない。
相変わらず全くわからない判定基準で選ばれオーバーキルされる哀れな一部のモブ達、キアヌの拙い日本語、モブをバチにして太鼓で遊ぶジョン、凱旋門で帰って来たマスタング捌きと前作までと比べ物にならない数で轢かれるジョン、階段やり直しのジョン辺りには抱腹絶倒。
引き継がれる犬ネタ、クラブでの戦闘、ブラントン(グリーン)、鉛筆に興奮。弓、手裏剣、日本刀、座頭市などの日本の武への敬意と、煌びやかな大阪や駅の風景(香港ぽい)はよくある誇張された日本文化となっており微笑ましい。異常に硬くなっていくスーツと凶悪な威力のドラゴンブレス。俯瞰ショット長回し。どこもかしこも全てに狂喜乱舞できる最高の娯楽。全く長く感じない。
侯爵が、"ジョンには何もない。ただ死に場所を探しているだけの亡霊だ"と揶揄するが本当にそう。犬が殺された復讐から始まった物語であるがスケールが肥大化し過ぎており映画としても死に場所を探していたのだろう。平穏を得ることに執着し続けた結果それを阻むものへの報復を繰り返し、ただの殺戮マシーンと化しているジョンだが、コウジやケイン、アキラとの邂逅を経て自らの罪と向き合うことができ、もし報復に成功し生き残ったとしても妻はおらず何も残らないことを悟る。
生きている者、愛する者を守ること、義を貫くこと、そして報いを受けるということが最後の弾を撃たないという選択に繋がったのだ。
妻の名を口にしながら力尽きたジョンは遂に命と引き換えに平穏を手に入れた。"ジョン・ウィック" "妻を愛した夫" 納得の最期である。
ジョンの生存ルートがあったとのことだがこれでいい。これがいい。エピローグでは報復の連鎖が終わらないことが示唆されていた。バレリーナとかスピンオフは良いのだがやはりジョン自身の前日譚が観たいところ。
ドニー・イェンのスピード感ある刀捌きは今までの殺し屋と一線を画す動きであり盲目の演技も驚嘆でぐるぐる溜めパンチなどの漫画的な演出も兎に角かっこ良すぎた。どこかで見た顔だなあと思ったらRINA SAWAYAMAかよすげえな。ちゃっかり静内もいたな。