おなべ

ただ悪より救いたまえのおなべのレビュー・感想・評価

ただ悪より救いたまえ(2019年製作の映画)
3.7
◉救いの無い悪夢的な悲運に翻弄される男達の死闘を描いた血生臭い韓国ノワール・アクション。アジア各国で繰り広げられる血で血を洗う争いに、日本ヤクザが参戦する…。

◉凄腕の暗殺者であるインナムは、日本での依頼を最後に前線から退くつもりだったが、かつての恋人が何者かに殺され、子どもが拉致された事を知る。その後、すぐに事件が起こったバンコクへと急行するも…。

◉監督は『チェイサー』『哀しき獣』の脚本を務めた《ホン・ウォンチャン》監督。個人的に《ナ・ホンジン》監督作品の『チェイサー』が、狂気と暴力を具現化させたような作品で、かなりお勧め。

◉《ファン・ジョンミン》にハズレなし。圧倒的な怪演で使い分ける表情によって、善人役も悪人役も、祈祷師もコメディもいけてしまう安定感抜群のオールラウンダー。本作では、暗殺者ながらも父親としての人間味を感じさせる主人公を演じている。加えて、今をときめくイカ俳優の《イ・ジョンジェ》が、凶暴な殺人鬼を迫真の演技(特に獣のような目力)で魅せる。

◉アクションシーンの撮り方の拘りが印象的。スピード調整しているのか、殴ったり蹴ったりする時の威力が倍に見える加工が施されており、ちょっとした長回しショット然り、アクションシーンの迫力は申し分無かった。

◉ラーメン好きな人が“よりくさい”ラーメンを求めるのと同じように、自分もまた、秀逸な韓国ノワール作品を観ていく中で、“より過激” 尚且つ“より灰汁の強い”バイオレンスを欲するようになる。そういう意味では、見応えもあり楽しめたものの、他作品と比べると物足りなさが残った…。
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