Hiroki

パラサイト 半地下の家族 (モノクロVer.)のHirokiのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 間違えて白黒で見ました

コメディだと聞いていたけど、あまり笑えなかった。というのもずっとなんか不気味でサスペンス状態だから。前半パートは少なくともコメディであるはずなんだけど、半地下家族による痛快な詐欺劇よりも、騙される金持ちの奥さんに肩入れをしてしまい、とにかくいつヒステリックを起こすか不安で不安でたまらなかった。

 中盤。地下室の存在に気づいてからの、二つの貧乏家族の生存競争は、見ていてただ辛かった。元家政婦の旦那は、金持ち社長を尊敬しているし、キム家族も彼らをいい人たちだと言う。実際、金持ち家族は、悪人としては描かれていないし、特に悪いこともしていない。金持ち達の暮らしは余裕があって優雅で善良なものだとお兄さんが言う場面もある。彼らの家庭にも歪みは見えるけど、家族でキャンプに行けるくらいだからかわいいもんだ。一方生存がかかった貧乏人達は、恐喝や暴力という様な非人道的な行いをする。地下の世界は地獄として描かれる。丘の上の豪邸を抜け出してもまた地獄。半地下は洪水が起き、下水が溢れかえる。妹がトイレの蓋を押さえながらタバコを吸うシーン。強烈だった。

 そしてクライマックス。この映画には全く救いのない結末が用意されている。幸運と金運の石(資本主義の理想)を大事にしていたお兄さんが、その石で殴り殺されそうになる。これは資本主義の理想によって、貧乏人が殺されることを象徴しているのではないか。それにも関わらず、彼は金を稼いで父を救うという。資本主義の理想によって這い上がろとする。しかしこの映画をここまで見ていれば、そんな事は不可能、格差社会を這い上がることはできない。という風に思わされてしまう。格差の広がった韓国社会では、あれだけ才能に溢れた家族でも、アルバイトにすらつけないのだから。それに彼らは犯罪者だ。自業自得と言われても仕方ない。

 お父さんと再会する未来を、かなりあっさり映像として描いたのもそれが達成されない事が分かっているから描けるものではないだろうか。再会のシーンは願望として描かれたものに見えて、むしろより絶望的な気持ちにさせられた。

 万引き家族では、貧乏でも肩を寄せ合って生きている姿が幸福感に満ち溢れていたが、あれは確かにファンタジーだ。実際の貧困家族はキム家族ぐらいに冷めてるだろう。結局貧乏では幸せになれない。幸せになるには、金を稼いで這い上がるしかない。しかし、ヒエラルキーが固定されていて這い上がるのは不可能に近い。こういうことか?映画で描かれる貧乏人は、善良で細やかな幸せを享受しているという姿が多いが、キム一家は、いい人達でもなければ、幸せでもない。

 韓国って本当にこんな絶望的な状況なの?多少過剰に描かれていただろうが、コロナ後の世の中がそうなっていてもおかしくない。
Hiroki

Hiroki