ベルベー

ヤクザと家族 The Familyのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

藤井監督というか河村プロデューサーのテーマについて語りたい欲が爆発した結果、大作と化してお腹いっぱいすぎる感はあるものの、終盤については概ね文句なし。

1999年と2005年と2019年、3つのパートで構成されている本作。しかも丁寧に時系列通りに進む。で、最初の2つのパートについては正直単調だなって思ったりした。数々の巨匠が手がけてきた題材、近年でも北野監督とか白石監督とかが高いレベルでやってるヤクザ映画に比べると。丁寧に作ってるけどその分、藤井監督の腕が追いついてないのが分かっちゃうかも?

でも、本作がやりたかったのは最後のパートだっていうのはもうあからさまなわけです。そこからの筆の乗り具合が全然違う笑。かつてはブイブイ言わせてたヤクザがどんなに惨めになったか。その惨めさたるや、北野監督だと思いっきり嘲笑うところをかなりペシミスティックに描く。ヤクザに肩入れすぎ!になるギリギリの塩梅。これが一番やりたいんだったら前半はもっと飛ばしてほしかったなあ、でも落差を描きたかったんだろうなあと思ったり。

兎に角後半パートのヤクザたちの凋落ぶりたるや。舘ひろしが死にかけの爺になってるのもショックだけど、北村有起哉の兄貴分も辛い。性格は全然違うのに、結果「グッドフェローズ」のレイ・リオッタみたいになってるっていう。舎弟が絶望的に弱々な男1人っていうのも泣けるよね。とにかく威厳がない、情けない。

一方でマルボウとよろしくやった豊原功補は大物ヤクザとしてふんぞりかえってる…どうせならコイツも凋落しといてほしかったんだが、現実はこんなものなのかもしれない。権力ファック!と中指立てるのはこのプロデューサーぽい。しかし別にイデオロギーを主張したいわけではないのだろう。と思う。

この後半パートの画角が違ったり色彩が違ったり、色々工夫されていて。過去の方が霞んだ色彩で、狭い画角という映画は結構有るけど逆なのね。出所してからの綾野剛、大切な人の人生をいくつも台無しにしてしまって悲惨な人生。それでも幸せな時間は確かにあったのだけど…それすら瞬く間に崩れてしまうのだから切ない。最期に彼が誰を殺して、誰に殺されるのか。辛いね。だからといってヤクザを肯定したいなんて露ほども思わないけど、でもこういう悲惨なヤメゴクも沢山いるんでしょうな。

ヤクザものといえば俳優陣の芝居に注目!ということで綾野剛。は最早信頼の綾野剛。20年経って肉体的にも精神的にも老いていく様子を目だけで表現してて凄い。以前に比べて力入りすぎてるきらいもあるものの、やっぱり凄い俳優だと思います。

舘ひろしはカッコいいおじいちゃんであることが大前提の役なのでどハマりです。カッコいい。あと、優しそうな雰囲気というのがミソ。そんな彼が上の命令には逆らえなかったり、病気で声も全然出なくなる悲壮さが良いよね。

一番良かったのは市原隼人な気がする。ヤクザ役、ありそうであんま見てないような。ワルいけど良い奴、なのが災いして結果的に最悪な目に遭う。岩松了が劇中言ってたとおりに。まさに正直者がバカを見る。そんな可哀想な男を熱演。可哀想と言えば北村有起哉も。この人は毎回上手い。

磯村勇斗も良かった。「今日から俺は!」でヤンキー役のハマり具合に驚いたけど笑、やっぱりコッチ路線が似合うなこの人。危うさと大胆さ、繊細さが同居した良き佇まい。

悪役'sも良かった!駿河太郎は年々アクの強い役が似合うようになってるよね。豊原功補も徹底的なクズって感じ。「アウトレイジ」の時の三浦友和彷彿とさせた。岩松了は権力持ったクズが本当似合うよね笑。
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