ヨーク

リーサル・ストームのヨークのレビュー・感想・評価

リーサル・ストーム(2020年製作の映画)
3.6
個人的には思ってた通りの作品が出てきたので大満足であったのだが他の人の感想とか見てると概ね評価は低いですね。うん、まぁそうだろうな、とも思うんだけど、でもね、でもですよ! あの予告編を見て極上のポリスアクションものの大作が観られると思いますか? どう見ても午後ロー常連顔の低予算でアイデア勝負な映画でしょうよ! そういう意味では本当に期待通りのものが観れたんですよ、俺にとっては。なんだか褒めてんのか貶してんのかよく分からない感じになってしまったが、基本的には面白かったですよ。
お話も実に分かりやすい。過去のある事件をきっかけにして無気力警官になってしまった主人公と向上心と野心満々でやる気に溢れた若い婦警のコンビが記録的な嵐が迫るプエルトリコの町で避難を呼びかけて回るのだがとあるボロマンションには避難勧告に従わない頑固な老人が二人いた。一人は辣腕を振るった元警官のジジイでもう一人はとある理由で貴重な絵画を隠し財産として所有しているマンションのオーナーのジジイ。この二人のジジイを説得するために主役コンビがやってくるわけだがその他にも貴重な絵画を狙って火事場泥棒ならぬ嵐泥棒のため凶悪な強盗団もやってくる…というお話。
まぁそういう展開の映画なので当然のように未曽有の嵐の中で応援もやってこれないマンション内で絵画を巡ったバトルが繰り広げられるわけだが、ぶっちゃけ大したことは起こらないんですよ。凄いアクションもないし大規模な嵐が迫っているという状況を活かした面白アイデアがあるわけでもない。言ってしまいますが本作における嵐は舞台をマンション内に限定するためだけの舞台装置でしかないんですよね。まず本作の企画的に主人公や悪役までもが強烈な嵐に翻弄されるような映画を撮ろうというわけではなく、予算がないから舞台が限定的な映画にしよう、だったらその理由付けのために嵐を使おう、という逆算で作られた映画じゃないかと思うんですよね。上で書いたアイデア勝負のB級映画というのはそういう意味もあるのだが、でもどうせだったらせっかくの大嵐をマンション内だけで完結させる理由付けにするだけじゃなくてストーリーの展開やアクションにも絡むようなアイデアを観たかったというのはありますよ。
基本的には地味で淡白な銃撃戦が続くだけですからね。嵐による豪雨で建物が浸水してくる描写とかもあるんだが、建物内に隠された貴重な絵画が浸水が進むと水浸しになってしまうという時限装置的なギミックを使って緊張感を持たせるとか、俺のような素人考えでもそういうこともできると思うんだけどそんな展開はなかったですから。なんかすげぇ平易な展開しかなかった。嵐要素としては足場を移動してるときに雨で滑りそうになるくらいだろうか。なんてしょうもない嵐要素なんだ…。
あと本作はタイトルがリーサルだしメル・ギブソンが出るというところも見どころではあると思うんだが、メルギブは主役コンビの婦警さんの方と座ってお話をしてるだけというシーンがしばらく続いてすわセガール的なポジションなのかと思ったんですが、さすがにセガールよりは働いてましたね。よかった。しかしとはいえメルギブは予告編を見る限りは超ヤバイ元警官のジジイって感じなんだけどその印象に比べたら相当に地味な活躍でしたね…。いやまぁそれなりにアクションもするけれど本当に最低限の仕事をしたという程度なので…そこを見どころだと思っていると肩透かしは凄いと思う。完全にタイトルは名前負けしてると思う。あと明確にダメだなぁ、と思ったのはマンションの一室が武器部屋みたいになってて強盗団をやっつけるためにその部屋へ武器の調達に行くという件があるんだけど、結論を書くとその部屋の武器は作中で一切活躍しないですからね。それはダメだろ、俺のワクワクを返せよ、と思いましたよ。
でも総合すると俺にとっては結構面白い映画だったんですよね。何も考えないまま観ることができて、むせ返るほどに香る午後ロー臭がなんか救いに感じたんですよ。最近観た映画は『ノンストップ』を除いてわりとシリアスなテーマのものが多かったので、これくらいしょうもない映画を観たいなぁ、と思っていたんですよ。その期待には見事に応えてくれたので良かったです。見え見えのオチとかも逆に癒しに感じましたね。まぁその分新鮮な驚きとかは全くなかったですけどね。
うん、最後まで褒めてんのか貶してんのか分からない感想になってしまったな。いや、面白かったんですよ、マジで。
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