次郎

あのこは貴族の次郎のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.1
「本当の金持ちはタワマンなんか住まない。あれは成り上がりが買うもので、本物は神戸の六麓荘や渋谷の松濤に戸建てで住んでる」なんて話を聞いたことがあるけど、本作の華子や幸一郎が過ごす生活は正にそれ。『花束みたいな恋をした』では直接的に言及されなかった格差を描きながらも、それは単なる分断ではないという可能性を確かに示している。
まずは映像表現として、華子らの貴族な人たちの生活風景の表現だけでも面白い。他の人も書いている通り人物のフレームイン/アウトについてはかなり意識的。また登場人物が多い前半と異なり、2人のみのシーンが増えていく後半は画面の構図や立ち位置からその関係性が浮かび上がるような表現は素晴らしかった。映画のテンポ感や会話のリズムも心地よく、落ち着いた照明や色使い含め世界観に安心して引き込まれてしまう。
本作の主人公である華子と美紀は別の世界の住人であり、劇内でも2人が対峙するシーンは数えるほどでしかない。さりげない、だけどかけがえのないエンパシーへの信頼が本作の軸となっている。
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