ドント

タミー・フェイの瞳のドントのレビュー・感想・評価

タミー・フェイの瞳(2021年製作の映画)
-
 2021年。キリスト教のテレビ伝道によって名声と富を成したフェイ夫妻の栄光と転落を描く実録映画。
 アカデミー賞をもらったジェシカ・チャスティンの(ご本人寄せメイクも含めた)演技はもちろんなのだが、旦那役のアンドリュー・ガーフィールドも相当に見事でこのコンビゆえのこの映画という作品であった。奥さんの派手さに目を引かれるがこちらもかなり凄いんですよ、地味に。賢くも弱めな夫と多才で明るい妻、このコンビネーションがパチパチいっていて良いのだ。あと保守的な偉いさんがヴィンセント・ドノフリオでこれも格別。。
 序盤のトントン拍子の成功譚まではテンポがよく観れたのだけど、そこからは実録映画によくある映像的な旨味のなさというのがどうしてもつきまとう。夫婦ふたりは「宗教で金儲けだグヘヘ」みたいな輩では全くなく、基本的には善良で開放的で人の心のあるキリスト教信者であるあたりは面白い。信仰心は篤いのだ。ところがそこはビジネスの怖さ、手を広げすぎて(天国遊園地とか)自転車操業みたいになっていく。
 しかし上述の通り映像的な旨味が少ないので、俳優の演技や衣装・小道具のほかは事実の回収みたいな内容に終始してしまう。もったいない……が、終盤の20分、この真性の善良さと女ナニワ(ナニワではない)のド根性ぶりを見せつける展開でかなり盛り上がった。これはアメリカン・ドリームの話であり、アメリカン・ドリームの終わりの話でもあり、また「アメリカだからこその夢」の話でもあるのを見せつけられてなるほどな、と頷いたのであった。
ドント

ドント