辻くんはじめとする男たち(傍観者のフリをする脇田も含めて)はもちろん、あれほど怒り狂った女たちですら、結局浮世に手を差しのべてしまう。虚言癖などなかったかのように。
イライラし通しだった私ですら、これはひたすらピュアなだけだったのか、と危うくこの物語に似つかわしくない凡庸なハッピーエンドを望みそうになってしまった。
浮世、末恐ろしや。
『寝ても覚めても』を髣髴とさせるラストは地獄のリスタート。
辻くんはもう逃げられない。
石橋けいの安定感は相変わらずだけど、浮世が初めて見せた笑顔の破壊力がすごかった。土村芳をキャスティングした時点でこの映画の成功が決まったと言ってもいいんじゃなかろうか。