スカポンタンバイク

FLEE フリーのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
4.2
面白かったという表現が合ってるかわからないが、面白かった。

ドキュメンタリーをアニメーションでやるという事で、アカデミー賞頃に今作の事を知った時は「どういう事?」となったが、なるほど。
今作はアミン(仮名)という人がアフガニスタン・ロシアからの脱出を図った体験談をインタビューしたものだ。内容としては実際にインタビューしているシーンと彼の脱出劇のシーンで構成されている。脱出劇に関しては、当然撮れているわけがないので、アミンの話に基づく創作になる。
そうなると「それはドキュメンタリーと言えるのか?」という疑問が湧いてくる。それに対する答えは正直確実な回答というのはできないと思う。極端を言えば、そもそもドキュメンタリーは撮影という行為が入った瞬間からドキュメンタリーではないという話もある。撮られる側が撮影者を意識した言動をしてしまうからだ。また、インタビューする相手の主観というものが話には含まれるわけだから、事実というのは人によって微妙に形を変えてしまう。だから、そもそもドキュメンタリーは一定をフィクションを孕んでいなければ存在できないのだなと改めて思った。
しかし、ラスト。このアニメーションが現実とリンクする瞬間が訪れる。その時、私は「あ、これはやはりドキュメンタリーだ」と思わされてしまった。この映画はアミンの主観的事実であり、それは今も続いているのだ。ここに私は心底惹かれた。
また、アミンの兄さんがあるお店にアミンを連れて行くシーン。ここは本当に泣いた。
最後にアニメーションとして。動き的な快楽はあまりないが、暗室・閉所の表現は本当に死ぬかと思った。こういうのが苦手な人は部屋を明るくして観るのをオススメする。