松原慶太

スパイの妻の松原慶太のレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.4
太平洋戦争直前の神戸を舞台に、ある商社マン(高橋一生)とその妻(蒼井優)、幼馴染の憲兵(東出昌大)を描く。

前半、TVドラマっぽい画作り(NHKのドラマを映画として再編したらしい)が気になってあまり話に入っていけなかった。

旧グッゲンハイム邸など、神戸で何箇所かロケもしたようであるが、大河ドラマ「いだてん」のセットをそのまま流用したというスタジオ内撮影が、その印象の原因だと思う。

正直、前半で脱落しそうになった。ただ中盤以降、物語が動き出すとけっこう面白くなる。

役者は好演している。高橋一生は物腰は柔らかいが何を考えているかわからない商社社長。酷薄な憲兵隊長の東出昌大も役柄に合っている。
とりわけ蒼井優は終盤にかけて怒涛の女優魂を爆発させて見ごたえがある。

映画としての完成度としては黒沢清の代表作とまでは呼べないと思う。ただテーマ(戦時中の重苦しい雰囲気のなかでどうやって身を処すか)には今日性もあり、いま作られることに意義のある作品だったと思う。
松原慶太

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