富樫鉄火

マイ・バッハ 不屈のピアニストの富樫鉄火のレビュー・感想・評価

4.0
思ったよりずっといい映画だった。もっと早く観に行けばよかった。
といっても、ハリウッド映画ではないので、「衝撃」場面の数々も地味に描かれ、正直、盛り上がりには欠ける。
では、知的静謐さにあふれているのかといえば、それもない。
ところが、音源がすべてマルティンス本人の演奏で、それが、たいへんメリハリの強い、いかにもサントラにピッタリの演奏なので、まったく飽きない。
演奏場面も、うまくできていた。
そのうえ、ラストで本人が登場し、曲がった指で演奏するものだから、もう、たまらない。
ただ、前半の「若気の至り」シーンは、もう少し絞って、なぜ、後年、生き方を変えたのか、映画なりの、わかりやすい説明がほしかった。
なお、マルティンスは、近年、バッハ・プロジェクトで世界中をまわり、子供たちに音楽を伝えている。
その姿を、あのようなクレジット横の写真でなく、少しでいいので、物語内でちゃんと描いてほしかった。
でないと、せっかくの邦題「マイ・バッハ」が生きない。
わたしは、原題「マエストロ・ジョアン」より、「マイ・バッハ」のほうが、ずっといいと思っている。
あと、パンフレット制作がないのが、残念だった。
富樫鉄火

富樫鉄火