こたつむり

嵐ケ丘/嵐が丘のこたつむりのレビュー・感想・評価

嵐ケ丘/嵐が丘(1939年製作の映画)
3.5
★ 降れよ、雨!
  吹けよ、風!
  僕の心が千切れるほどに荒れていけ!

世界的名作『嵐が丘』を映像化した作品。
…ってスミマセン。原作は未読の不勉強者です。ピントがズレた感想になると思いますが、太平洋よりも広い心で見逃していただけると幸いです。

さて。
正直なところ、前半は退屈でした。
主人公二人に共感を抱くことが出来ず。
しかも、現代の視点で観てしまえば類型的な表現に肩は下がるばかり。名匠ウィリアム・ワイラー監督作品でもハズレはあるのかな…なんて不届きな考えも横切るほど。

しかし。
物語中盤に気付いたのです。
本作の登場人物たちは全て“ゲス”であると。
つまり、身勝手で傲慢な男女が「愛だ」「憎しみだ」と宣いながら破滅に向かう物語。そう考えると俄然鼻息は荒く、背筋はピンと伸びたのです。

そう。
前半は後半が活きるための仕込み。
グツグツとした不満は溜めて溜めて溜めて一挙に解放すれば良かったのです。何しろ、彼らが煉獄に堕ちていくのは自業自得。ふははは。見よ、人がゴミのようだ!

あれ?
この展開って…登場人物たちよりも僕の方が“ゲス”なのでは…。さすがは名匠。真の名作は「観客自身を映す鏡だ」と申しますからね。きっと心が綺麗な人ならば、悲恋の物語として受け止めるのでしょう。

まあ、そんなわけで。
世界的な文学を受け止める素養がないことを実感した作品。全くもって解せぬ話ではありますが、我が身をこれ以上毀損するのもどうかと思いますので、取り繕ってから筆を置きたいと思います。

あー。面白かった。

最後に余談として。
鑑賞後にウィキペディアで知りましたが、主人公二人を演じた俳優さんたちは実際に仲が悪かったそうです。確かにヒロインが愛を語る場面は“不自然さ”満載。そして、憎しみ合う場面は臨場感が違うのです。なーんだ。やっぱり“ゲス”の物語じゃないですか。げっげっげ。
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