Habby中野

シュシュシュの娘のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

シュシュシュの娘(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

80's洋楽ポップコンピレーションの居心地の悪い温もりは、島国の閉鎖的な田舎にこそいなたく響く。
こういうことを書くのは不遜だとも思うが、日本の地方都市の姿を描いた映画が好きだ。先の見えない河川、最近舗装し直された国道、国道沿いの畑、畑に並ぶ平らで長い量販店、看板までが大味な飲食店、退屈さ、エンタメの素朴さ、性欲、幸福、死。過剰な自意識を介さない生活のイメージはどこかの誰かの暮らしを現実味をもって想起させ、なんだかそれによって自分のこのいまも保証されるような気がする。あちらがあるから、こちらがある。都市は都市だけでは存在し得ない。
そして一国で起きたことは一市町村でも起こりうる。国家権力者による罪の縮小化した再演ではなく、それをオマージュする、でき得るということそのものを舞台化してしまったメタ的なコメディだ。お前らがやったことはこういうことだぞ、と希釈されないままに身近に指差すこと。
隔世的で独立的で閉鎖的だからこその右傾化、それはしかし誰の責任なのだろうか。この過ちは独立した誰かに帰属する責任があるのだろうか。一方で日本の伝統、としての忍者である。伝統の忍者vs保守、あるいはここに加わる保守派の忍者。いついかなる時も、戦う我々は誰かの子孫だ。この血は伝統の先だ。そこに責任を負うのではもちろんない。コスプレ(?)でもいい、それを知り、目を向けていきたいと思う。それができなければ罪を責めることもままならないだろうから。
たぶんつまりはこれは舞台化された見事な現実の問題解決方法への手解きだ。目の前を見ろ、自分を見ろ、濁った目を閉じろ。足下には何がある。一国で起きたことは一市町村でも起こりうる。果たしては逆はあるのだろうか。数十キロに亘る川、最近舗装され直された国道、国道沿いの畑、畑に並ぶ平らで長い量販店、…………。
Habby中野

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