真っ暗な道を行く車。その路肩に見本市のように並ぶ娼婦たちからひとりピックアップして殺人がスタートするオープニング。黒の濃さと娼婦たちのカラフルさの対比からして4Kレストアの美しさを存分に堪能できた感があって、冒頭からテンション上がった!そして多→個のターゲッティング、殺人のタイミングで合わさる旅客機映像をプロローグに配置するのは次作『The Case of the Scorpion's Tail』でも形を変えて反復していることから考えてもマルチーノさん好きなんやろね。飛行機好きとか何か可愛いわ🤣まあ『The Case of …』では木っ端微塵にしてたけど笑
同監督&フェネシュの次作「All the Colors of the Dark」(1972)と同様に映像が極めて美しい。陽光のオーストリアのロケーションの中で、黒手袋、刃物、エロスと、ジャッロの基本パターンがなぞられていく。しかし精神的混乱や幻想を示すシーンは少なく、ゴージャスな「火曜サスペンス」と言った趣。映像もシナリオも破綻なく楽しめるのでジャッロ入門編として最適かもしれない。欲を言えばウォード夫人の悪徳をもっと打ち出していれば映画に厚みが出たと思う。