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ヘイターのmajiziのレビュー・感想・評価

ヘイター(2020年製作の映画)
4.0
現代社会の問題を詰め込んだ社会派ドラマ。

主人公トメクがPR会社でターゲットに対してSNSでネガティブキャンペーンをしていくうちに、どんどんエスカレートしていくお話です。

ポーランド作品ということで一人も役者さんは知りませんし、政治情勢に明るくありませんが、ヨーロッパに蔓延する移民排斥、国粋主義、格差やLGBT問題、SNSの誹謗中傷とテーマがたくさんありながらもうまく凝縮されていました。

主人公がかなりクズ野郎で全然共感も同情できないんですが、
こいつ…何かしでかすな!って雰囲気と、負のオーラがすごくてちょっとワクワクします。

トメクは田舎から出て来た貧乏学生で、奨学金を裕福な家庭から受けています。でも論文盗用をしてしまい除籍に。
その裕福な家庭の娘も同じ大学でトメクは好きなんだけど、その子はトメクのことなんて眼中にないビッチ。

この裕福な家族はトメクに対して、お金の援助はするけど影ではバカにしていて下品な連中です。

ロシアのオリガルヒまではいかないまでも、ポーランドも共和国で自由経済になってから、上流階級ができたんでしょうね。だから成金まるだしって感じで、援助することがステータスっていうような人たちです。

トメクは論文盗用を平気でする子なので、この家庭にも盗聴器仕込んだりとても道徳観念が歪んでいます。

でもその度胸?を買われて、PR会社でどんどん手腕を発揮。

フェイクニュースの拡散でターゲットを追い込み、上司に気に入られます。

そしてリベラル派の政治家を陥れる依頼が舞い込み、トメクはSNS上では攻撃をし、実生活では彼のサポーターとなって選挙事務所に入り込みます。

もうこのへんから怪しさと際どさが加速していくのですが、一番危ない橋は自分で渡らず、利用できそうな人間をネットで目星をつけ、オンライン上で折伏します。

この相手も日頃、過激なことをネット上で発言しているどちらかといえば貧困層の人間。

リベラルな政治家の方が保守派よりも彼らの立場をくみそうな感じがするけども、、、??

結局そういうことはあまり深く考えないのか、最終的にお金でトメクの思惑通りの行動に出ることに。

ここからえらいこっちゃになってしまい、ラストはかなり不条理な展開でとても鬱々とした作品でした。

けれども先が読めず、すごく面白かったです。
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