やんげき

ノマドランドのやんげきのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
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美しくも哀愁を帯びたラストシーンが圧巻。静かな感動と共に多くの物事を考えさせる。

この映画はファーンという女性が、やむを得ずノマド(放浪)の生き方を選択し、その果てにもう一度ノマドの生き方を自ら選び取る話だ。

経済社会に翻弄され、houseを手放したことで手に入れたもの、自らの中に残っていたものが何だったのかをラストで鮮やかに浮かび上がらせる構成、演出、主演フランシス・マクマードンの演技は完璧に機能してる上に、さらに多くのものを観客はキャッチするだろう。

「彼らはgood bye(さよなら)とは言わない。必ずsee you(また会おう)と言い、実際にそうなる」という一言が、私には激しく刺さった。

定住は意図せず別離を促し、流浪は循環の中に取り込まれる。そう考えると、この映画は一切それを言わないが、鋭く深い気候変動映画なのかもと思える。

雄大な自然のパノラマショットと、窓枠に切り取られた緑あふれる庭が映った室内の対比が、心の中で反復して蘇えり、どっちが素晴らしいか明確に訴えてくる。

日本でも、マイクロハウスやシンプルライフの概念は存在するけれど、社会や法はまだこの生き方をほとんど許容できてないし、ファーンのようなエッセンシャルワーカーで車を持つことは夢物語だ。国の広さが違うからだけど…

色々な事を思わせる良い映画でした。
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