若い頃からノマド的な暮らし方に憧れがあったので、鑑賞するのを楽しみにしていました。でも、実際のノマドの生活には、私のお気楽なイメージを覆す厳しさが満ちていました。氷点下の吹雪の夜、ガラス一枚で隔てた車内で朝を待つ辛さ、いつ何時、犯罪者に襲われるかもしれない恐怖、砂漠のど真ん中で車が故障してしまう絶望感…そんな現実を私は知りませんでした。
夫を亡くしハウスレスとなった主人公。他人との付き合いやしがらみが嫌いな人。ハウスもホームも手放さず気が向いた時だけノマドになる人。愛する家族を失い贖罪の旅を続ける人…。
一口にノマドと言っても、胸の中に抱え込んでいるものは人それぞれで、決して一括りには出来ない事を知りました。
好きで遊牧民になる人は楽しい人生だと思います。けれど、全ての選択肢を失い放浪者になってしまう人がいる社会は…悲しいです。
