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音響ハウス Melody-Go-Roundのkyokoのレビュー・感想・評価

音響ハウス Melody-Go-Round(2019年製作の映画)
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45年間、決まった時間に毎日スタジオを訪れ、メンテナンスを行う70歳の生真面目な姿に、「音響ハウス」が持つ妥協しない価値観が見える。
音響技術のマニアックな話が多いのかと思っていたけど、ひとつの楽曲を作り上げる過程を追いながら、スタジオにゆかりの深いアーティストたちが思い出を語る、音楽の目覚めが80年代だった私にとって、たまらなく甘酸っぱいドキュメンタリー。
井上鑑さんのキーボードが奏でるイントロ、幸宏さん(無事退院してくれてよかったよ~)の正確無比なドラムがあっという間にあの時代に連れていってくれる。名だたるスタジオミュージシャンたちの1言えば10伝わるセッションはそれはそれは見事だった(ヘッドフォンをカチューシャにする葉加瀬太郎はその時代の人ではないけれどやはりさすがだった)。ミキサーの前の飯尾さんの幸せそうな顔に、私もニコニコしちゃう。
レコーディングも演奏部分の録音が終わっていよいよ歌入れ。てっきり大貫妙子が歌うのかと思ったら、知らない子がマイクの前に立った。ここで大貫女史が歌ったらただの回顧映画になるところだったけど、13歳とは思えないHANAちゃんのすばらしい声が次の時代につなげてくれた。
そして大貫女史が歌唱指導してる場面がレアすぎてたまらない。

完成した曲に、「特別だった時代」を思い出して泣いた。

アーティストとクライアントがクリエイティブな側面でコラボレーションする、今までただのBGMだったCMソングをひとつの楽曲として世に送り出すことに成功した人物・大森昭男氏の話はやや唐突な上に中途半端。ていうかこの人の仕事だけで1本のドキュメンタリーが作れるだろうに。
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