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ベイビー・ブローカーのBATIのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.2
多分映画としては上手くはなくて、ヒットする作品ではなく、カンヌで賞取りにいけなかったのも分かるんだけど、これだけの語りたいもの、物語があって、なおかつ是枝裕和が自分の中で更新しなくてはならない価値観について誠実につとめようとしているのが伝わってくるから私は好きだよ。

是枝裕和作品の中でも女性表象は一番好きです。女を「母」ではなく人間にしていた。そしてフェミニズムに限らず人は皆少しづつ罪を重ねている、そこへの慈愛に満ちた作品でした。

ショットはほぼなく是枝作品ぽくないし、勿論韓国映画っぽくも見えないのはそれぞれの作品や歴史にあるウェットさがないからなのだろうか。それでも終盤にかけてはとても是枝裕和の映画になっていた。ソヨンを見つめる人々の視線、それこそが是枝裕和の視点であり、慈愛。

ソヨン演じたIUがキャラも演技も引っ張っていた。「被害者」でも「母」でもない人間だったのが良かった。「いつも母親ばかり悪者にさせられるけど、父親のことも言えよ!」はこの映画のテーマの一つだろう。自立意志のある人間。

赤ん坊の世話をするのは母親/ 女の仕事だろってブン投げてないでその場にいるみんなでやってるのが良かったね。擬似家族ものではあるだろうけど、やるべきことを差し置いて「家族」という言葉と肩書きが先にも後にも出てこないのがよかった。
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