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ベイビー・ブローカーのtakaのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.0
一人ひとりが生まれて来た奇跡を「生まれて来てありがとう亅とみんなで認めあえる喜びが今の社会に無くなっていくことへの問題提起がある。一人ひとりの命と存在を社会の宝として慈しむ前にその責任を家族に押しつけ、最後には自己責任として始末しようという雰囲気を感じる最近の日本社会。
血のつながっていない登場人物たちが次第に赤ちゃんの存在を中心に恵まれなかった自分自身を見つめ、自分への自己肯定感を取り戻していく。それは彼らをベイビーブローカーの現行犯として追っていた刑事たちも巻き込んでいく脚本も見事。全体を通して映像も美しく、静かな音楽も作品に気品を与えていた。数年後成長した子の姿とそれぞれの登場人物たちの立ち位置が描かれ、その後の可能性を示唆しているラストは、観ている私たちに傍観者としてではなく同じ社会を生きる者としての決意を問うているのだ。
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