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らせん階段のSPNminacoのレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
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嵐の夜、お屋敷で連続殺人鬼の魔の手が迫る。オープニングの無声映画(ピアノ演奏と手回し映写)、吠えないブルドック(かわいい)とヒロイン、声を出せない使用人ヘレンを重ねてあるのがわかりやすい。屋敷の一族は色々訳ありで、「この中に犯人がいる」と怪しい容疑者を匂わせたミステリーと、今で言うスラッシャーホラーを合わせて、狙われたヘレンのハンディキャップがハラハラさせる趣向だ。
動機が優生思想+マチズモという犯人像がかなり毒々しい。そもそも警察の捜査が杜撰すぎるし、ヘレンに気がある医者もトラウマを強引に追い詰めるし、みんなしてヘレンを守ると言いつつ役に立ってない。なので、女性の殆どが(嵐にも関わらず)屋敷を出て行こうとするのは「守る」を大義に勝手に振る舞う男性キャラクターたちを見限ってのことだ。とはいえ、屋敷を出入りするのは男(と男に連れ出してもらう看護婦と犬)だけ。当時、男の乗る馬車で移動する女たちもまた弱者の側だ。昼間、一人屋敷へ帰るヘレンは医者の馬車に送られるも途中でまた1人になり、雨に濡れてしまう。
だが、病床で動けない女主人とヘレンはお互いを守ろうと努める。そして、見下された弱者が強者を見下ろすらせん階段。螺旋にも含む意味がありそうな。
電話を使ったサスペンスは効いていたが、犯人視点ショット、犯人の目のどアップはいささか大仰すぎる恐怖演出。都合のいい展開やヒロインの描写も古臭さが否めないが、44年作にしては視点が鋭かったかもしれない。
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