木上

シングルマンの木上のレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
5.0
彩度の操り方が印象的でした。
主人公はスタートからすでに死と生の間をさまよっていて、それを物語の構成だけではなく彩度という視覚に訴える手段を使うのが、さすがはファッションデザイナーなのだなと思います。

あと非常にスピリチュアルな内容だと感じました。
まだまだ同性愛がタブーである冷戦中の時代背景で、その中での価値観や米国の雰囲気などの説明がちょこちょこと構成の中にあったように思います。
実際には色鮮やかで、物質的に豊かな国なのだと思いますが、主人公にとってはそうではないというのが画面に現れています。
主人公にとっての豊かさとは、他者とのふれあいであり、人生の意味なのだと感じられます。
地位も洗練された自宅も意味はありませんし、他者とのふれあいのみが彼に喜びをもたらしてくれました。
だからこそ最期が有意義なものとなり、満足感をもたらすエンディングとなっていると感じます。
物語の裏に、表面の物質や物体ではなく、本当に大切にすべきものについて訴えられている気がしました。
視覚的に美しいものは物質なので、その点では矛盾とも言えますが、本質は精神なのかなあ…と思います。
木上

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