回想シーンでご飯3杯いける

シングルマンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
3.3
「キングスマン:ゴールデン・サークル」を観た流れで、コリン・ファース出演作品を何か、という事で本作をチョイス。しかも「キングスマン」で敵だったジュリアン・ムーアが元カノ役で出ているというのが何とも面白い。

本作でのコリン・ファースは、ゲイの大学教授という役どころ。こういうインテリな役をやらせるとこの人は本当にしっくり来る。公開時期は「ラブアクチュアリー」と「英国王のスピーチ」の間に当る時期で、正にその頭角をメキメキと現していた頃になると思う。

監督は世界的なファッションデザイナーとして知られるトム・フォードという事で、服装やアクセサリー等の小道具は勿論、徹底した映像美を楽しませてくれる。また、彼自身が同性愛者という事も関係しているのか、登場する男性の描き方が艶かしく、性的な美しさを際立たせている印象が強く残る。言い換えれば、女性に受け入れられやすい作品と言えるのではないだろうか。

1960年代が舞台で、同性愛がまだ広く認められていないが故の主人公の孤独を軸に描かれた作品である。先にも書いた美しい映像と、少ない台詞が、それを一層引き立たせる、とても奥深い作品だと思う。

一方で、美しいからこそドラマとして成立しているディレクションは、LGBT映画としてミスリードを生んでしまう可能性もあり(ゲイがみな美男子というわけではないはず)、そこは現在の視点で見ると一考の余地があると感じる。