ノラネコの呑んで観るシネマ

大綱引の恋のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

大綱引の恋(2020年製作の映画)
3.9
昨年急逝された佐々部清監督の遺作。
薩摩川内に伝わる大綱引祭を背景に、東京で夢敗れ父の建設会社で働く三浦貴大と、ジヨン演じるマンガ大好きの韓国人研修医の恋が描かれる。
なぜ韓国かと言うと、向こうにも似た様な大綱引祭がある縁で姉妹都市になってるんだとか。
都会からUターンして親との確執を抱えた主人公に、地域文化の担い手としての重圧、すごく狭い範囲の幼馴染関連の微妙な関係。
やたらと観光地の描写が多いのも含めて、分かりやすいご当地映画だ。
だが地域振興が目的のこの種の映画で、予定調和は悪いことではないと思う。
その反面、大綱引祭のスケールは、こっちの想像を超えていた。
綱引きなのに押し手がいるし、まさに薩摩藩の総力をあげた擬似合戦なんだな。
地元の男たちにとって、“一番太鼓”と呼ばれるリーダーに選ばれることが、最高の栄誉。
祭の後も、この土地で生きていかねばならない彼らにとっては、これは確かにめっちゃプレッシャーだわ。
最後ちょっとうるっと来たし、佐々部監督らしい優しい映画だった。
「一期一映」に感謝。