回想シーンでご飯3杯いける

アムステルダムの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アムステルダム(2022年製作の映画)
3.0
第一次世界大戦から、その後15年間を舞台に、軍医、黒人兵士、看護師の友情を描く。当時の財界の指導者達がナチスに傾倒し、アメリカで独裁政権を作ろうとした事件「ビジネス・プロット」を題材にしているらしい。

本作がユニークなのは、この題材でありながら、史実をなぞるリアリティ重視の作品とせず、主要3人のユニークな人物像にスポットを当てた、友情と芸術と人権の物語として構成している点だ。クリスチャン・ベイルは戦地での負傷により片目を無くし、義眼の医師として再出発する、とぼけた青年を好演。マーゴット・ロビーは負傷兵の体内から摘出した銃弾でオブジェを作る変わり者の看護師を、ジョン・デヴィッド・ワシントンは帰国後に弁護士として活躍する聡明な青年を演じている。

ありがちな実話系戦争映画に陥らない作風には好感が持てるのだが、どうにもストーリーが頭に入ってこないのは、皮肉にも3人以外に多数出演するキャストが豪華すぎるからなのだろう。テイラー・スウィフトの意味ありげで、あまり意味の無い登場や、顔が売れすぎているアニャ・テイラー=ジョイ、ラミ・マレック辺りは、人物像が極端で、ただでさえ複雑なストーリーを理解する上で不要な混乱を生んでいるように感じる。

第一次大戦当初は中立国であったオランダの首都、アムステルダムをタイトルにした作品なのである。戦地という皮肉な場所で出会った3人の友情と平和へのメッセージを軸としてしっかり据えた構成にすれば、強く印象に残る名作にも成り得たのではないか。何とももどかしさが残る作品である。