このレビューはネタバレを含みます
この手の脚本に意味のない会話やシーンはない。
トレーシーに赤ん坊を産むべきか相談されたサマセットは「産まないと決めたらミルズには黙っていろ。産むなら精一杯甘やかして育てろ」と返答する。
そして、ラスト。ミルズはトレーシーが妊娠していたことを知らなかった。
この映画の最大の悲劇はここにあると思っている。
トレーシーはサマセットに相談したあとも悩んでいた。言えずにいた。産まないと決めたわけではないだろうが、産むとも決められなかった。
脚本の意図をくめば、トレーシーは産まないと決めたということなのかもしれない。
あの街で、社会で、子供は育てられない。
そう1人の母親に決めさせる世界はどんな残虐な殺人鬼よりも恐ろしく、またどんな死よりも悲しい。