プロットはあってないようなもの。せめてアバンで普段の上手くいってる仕事風景を描いてくれていたら……なんて思ったけど、それじゃただのジャンル映画なんよね。
超シンプルでおかしな話だからこそ際立つフィンチャーの偏執的映像へのこだわり、音へのこだわりに酔い知れた2時間だった。これは映画館で観て正解!
実はチャプター1までネトフリで観てたんやけど、近場の映画館で上映予定があると知って即座に停止。劇場で観るまで我慢してました。
しかし、失敗したのは車で観に行ってしまったこと。
自宅まで歩いて30分くらいだから、歩いて観に行けばよかった。そうすれば帰り道はトレントレズナーの劇伴を聴きながら、黙々と夜の街を歩く「ザ・キラー」ごっこができたのに!
歩きながら飲み終わったペットボトルを歩をゆるめずに、さも使い終わった銃器を処分するがごとく通りすがりの自販機のゴミ箱に捨てる「ザ・キラーっぽい」ゴミ捨てごっこができたのに!
もうね、内容はないっす。
でも、観た後しばらく奴が心の中に住んでしまう。
偉そうに自分の「セブンルール」を頭の中でぶつぶつ言いながらやらかしを連発する様はなんか癖になる。
やるときはやる、容赦なさは十分伝わるんだけど、いかんせんマッコールさんのような正確性はないわ、ジョン・ウィックのようなスタイリッシュさもない。
ただごたくが多いだけ。
きっとビジネス新書を出したらそれなり大ヒットしちゃうんだけど、本職は実はそんなでもないよね。て言われちゃうやつ。
ある意味、割と平凡な殺し屋。
カリスマ性もスタイルもないから、業界ではあんま憧れられてないし、あえて語られることもない。
本来はテレビや映画で取り上げられるタイプじゃない人。それこそ、国岡さんみたいな。
「殺し屋で上手く活躍できれば、まぁだいたいこの人みたいな生活できますよ」
みたいな人。
今回、自分の失敗棚に上げて殺しのかぎりを尽くしたあたり、「あいつ面倒くさいから関わるのやめとこ」となるか、もしくは本格的に絶対最強の殺し屋差し向けられて終わるか。そのいずれかでしょうね。
でも映画として、フィンチャーのような監督に取り上げられるとなんとなくスタイルのある、プロフェッショナルに見えなくもなくなってくる。
そんな殺し屋、「ザ・キラー」
僕は好きですよ。映画としては、ね。殺し屋としては……笑