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ドライブ・マイ・カーのmiiのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.3
3時間と長尺ながら 引き込む力があり
語られる事のない心が見える 好きなタイプの物語でした。
「ドライブ・マイ・カー」
自身の心に向き合う再生の物語。

妻 音を亡くした夫 家福は
動揺しても自分を制する男。
反対に衝動的な男高槻は 自分の思うまま動く男。
音は ヤツメウナギの続きを高槻には話していた。

その話の女生徒は おそらく音。
空き巣を繰り返して 自慰をする彼女は
背徳行為を繰り返す彼女自身。
高槻の話から もう一人の空き巣は
夫 家福だろう。
彼女の浮気を見て 知りながら何も咎めない夫。
音はそれを知っていたのでしょう。
知っててわざと 男を家に呼んだのかもしれない。
わたしの内の声を聞いてほしい
知っているのなら 何故責めないのか?と。
これを語る高槻は話の意味を理解していて
真相を語らずに訴える演技は見応えがあった。

この話を静かに聞いていた家福のドライバー みさきも
寡黙で何かを抱えている女。
嘘だらけの生活で暮らしていたために
嘘を見抜くスキルを自然と身につけたと言う。

二人は車中で同じ時間を共有し
それぞれの過去を語り合うようになる。
そうする事で 心に閉じた咎を開放してゆき
そこから前に進むことができた。

演劇の主役は彼そのものであったため 拒否していたが
代役を引き受けられたのも
自身の罪を受け止められたから。
あの雪の中での叫びを 音にストレートに伝えてほしかった。
時には高槻のように。

演劇ラストの手話も 効果的でした。
あの言葉をダイレクトに口頭で語るよりも
趣きがあって良かった。

ミサキの頬の傷は消えていて
あの赤い車は譲り受けたのでしょう。
家福にとって 彼女は恩人のようなもの。
彼女の晴れやかなお顔が印象的でした。
mii

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