いわし亭Momo之助

ドライブ・マイ・カーのいわし亭Momo之助のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.0
個人的にはあまり好きではない

ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、カンヌ国際映画祭 脚本賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞・脚本賞、ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞と海外の名だたる賞を軒並み受賞しているのだから素晴らしい作品であることには間違いないし、今更、それを貶めてマウントを取るといったアホな真似をする気もさらさらないのだが…
そもそも、2時間越えの作品は尿意との戦いであり、鑑賞以前の問題が付きまとう。鑑賞者にとっては相当にリスキーなわけで、2時間を超えることの意味を感じさせてほしい。あるいはインド映画の様に、間で一回、休憩を入れるとかさ。

個人的には、映画は言葉に頼らず、映像で見せてほしい という思いがある。
実はこの作品には言葉に頼っていないシーンが、それ相当にあるのだ。例えば、演者の台詞が数か国語で飛び交い、結果、台詞が音でしかなくなる劇中劇の演出方法(ただ、母国語で演じられることは、演者にとっては大きなアドバンテージではあるし、お互いの演技を言葉きっかけではなく、ニュアンスでとらえることは、役者力の確実な向上につながるとは思う)であったり、脚本の読み合わせの段階では、台詞を棒読みする という濱口竜介監督自身が取っている演出方法がそのまま出てくる。
瀬戸内の島々や北海道の雪景色など日本全国の風光明媚な土地、どこまでも続くハイウェイ、東京の夜景等をふんだんにとりこんだ絵作りは、この作品が日常のさりげないシーンを大事にしていることを伺わせるし、ここを丁寧にやっているからこそ3時間の長尺に及んだということもよく分かる。ロードムービーとして出色の出来であることも。

しかしである。脚本賞を獲得している事からも分かるように、やはり台詞の妙にかなりな部分を委ねているのも、また確かで、それがこの作品の魅力であることも間違いない。
序盤の夫婦のピロートークがそのままドラマの題材になるエピソードや車の中での台詞練習、中盤の山場である家福と高槻(高槻は刃傷沙汰を起こした直後であった)の緊張感みなぎるタクシー内での会話、寡黙なドライバーであった渡利の来歴を聞きくことにより家福が妻との関係に真剣に向き合おうとするところ等々、実に膨大な量の台詞に満たされている。
外国人がこの作品を字幕で見て、本当に楽しめるのだろうか? と心配になるほどの量である(いや、吹替なのか)。脚本賞なんて、マジでそんなこと思ってるのか? と少しいぶかしく思うくらいだ。そして、映画は文学ではないから、いわし亭はやはり、この作品を絶賛することに躊躇する。

終盤の30分、あれほど饒舌だった作品は急に無口になり、北海道の美しい風景と自らの宿業に一応の終止符を打つ家福と渡利を描き、場面が変わると家福から赤のサーブ900を譲り受けたであろう渡利が韓国で暮らす日常をさらりと撫でて、あまりにも説明不足に、唐突に終わる。何だったんだろう… という感じが濃厚に残る幕切れではある。

閑話休題:
◎ 作中、家福がチェーホフを高く評価する台詞があるが、いわし亭は高校生の時、現代国語の教科書に掲載された短編『大騒ぎ』で初めてこの作家に出会った。なんだこのカスみたいな小説は と思った。
◎ 村上春樹の作品タイトルにはビートルズの曲名を拝借したものがある。有名な作品は『ラバー・ソウル』に収録の「ノルウェイの森」であるが、この「ドライブ・マイ・カー」も同アルバムに収録されている。
◎ 序盤60分、ベッドシーン満載なのに、霧島れいかのサービスカットが一切ない。大変不満である(爆)