HomareKarusawa

岬のマヨイガのHomareKarusawaのレビュー・感想・評価

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)
4.0
みんなの苦しみに寄り添おう。まさしく震災応援の作品でした。

傷を抱えた人が傷を克服する話ではありませんでした。ここにいていいよ。でも自分だけひどい目にあっているんじゃないよ。他のみんなも何かに傷付いているんだよと気づくことが癒しにつながるという話でした。

でも、だったらユイの父もまた傷を抱えた人であるはず。ユイが、父がなぜ荒んだのかに想いを馳せる気配がなかったのは? まだ連れ戻される恐怖を断ち切れていないから、そこまでは無理だったのでしょうか。ユイにとっては、邪悪な家族=どうにもならない理不尽、震災に比肩する困難だからでしょうか。
DVからは逃げるのが正解で、ユイが父を赦すことつながる流れはテーマにそぐわないかもしれません。でも物語としては父にも救いが欲しかったです。父は人間なんだから。「母さんが出て行った」と言及があるのが、かすかなエクスキューズ。

あと、町を出て行った人々と町に残った人々を分断するようなメッセージが引っかかりました。

アニメとしては、田舎暮らしの日常を体感する描写がとても楽しい作品でした。
優しく世話好きな町の人々との交流。その背後では東日本大震災の傷跡も生々しい。
ひよりちゃんと筆談したり表情や仕草から気持ちを読み取るうちに自ずと愛着が湧いてきます。かわいくて仕方ない。
おいしいものを食べるシーンでは、環境音も止み、口に入れた瞬間の味わいを想像されて唾が出てきます。
というように、スクリーンに集中できる環境だと面白さ倍増なので、劇場で観られてよかったです。
HomareKarusawa

HomareKarusawa