アラサーちゃん

ローラ殺人事件のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

ローラ殺人事件(1944年製作の映画)
4.5
フィルムノワールとして名高い作品。モノクロサスペンス好きにはたまらない良作でした。

ローラが惨殺されたことに対する、パトロンである有名コラムニストがコメントしているらしいナレーションで物語は始まる。美しいローラの肖像画のアップ。
そのローラこそ、登場しないながら圧倒的なファムファタールとしての存在感。惹きつけられるのは彼女と交際していた冒頭のコラムニストやプレイボーイな婚約者だけではない。捜査に当たるハードボイルドっぽい刑事、これが観客目線の主人公なんですが、関係者からローラの話を聴き、頭の中で動き、喋り、笑うローラの想像を膨らませていくうちに、この刑事すら、会ったことのない彼女に心を奪われていく。

そして、物語の中盤に差しかかり、とんでもない転調が起こる!

そこからガラリと物語の方向は変わって、めくるめく展開、人物たちの絡みあった糸がね…薄汚い愛情のベクトルがね…そこから導き出される動機や事件の展開がテンポよく描き出されてゆくのです。昨今の大胆なプロットや派手なストーリーが好みの方にはつまらないかもしれませんが、こういう古典的な作りは好きな人にはたまらない。なかなか愉快です。

ラストシーンは必見。これは映画史に残るラストシーンではないかと。「グッバイ、ローラ、グッバイ、マイラブ………」このセリフとあの映像。何だこのセンスのよさは。くぅっと唸ってしまいます。
オットー・プレミンジャー作品はまだまだ未見のものが多いですが、質のいいサスペンスが多くて素晴らしいです。