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浅草キッドのTSのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
3.8
【芸の巨人 誕生秘話】80点
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監督:劇団ひとり
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:122分
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 劇団ひとりが監督、大泉洋が主演の組み合わせは『青天の霹靂』以来か。かのビートたけしの自伝的映画であり、あのたけしでもこんな時期を過ごしたのだなと思うと、どんな大物でも最初は小さな存在だったということがわかります。ビートたけしを演じた柳楽優弥はまた一つ素晴らしいキャリアを身につけたと言えるでしょう。たけしの所作や言動を徹底的に研究し、再現させたものなのだと思います。

 たけしが尊敬していたのは、テレビに出るのが嫌いだったため、今や幻の存在と化している深見千三郎。ビートたけしの才能をいち早く見抜いていた人物であり、雑で横柄な性格もありますが、部下想いの良い上司といったところでしょう。馬鹿野郎を連発するところを見るとやはり時代を感じます。今やコンプライアンスが何だので、テレビ番組が面白く無くなったと言われて久しいですが、今作はテレビが主流になるまでのギラギラとした昭和の大衆娯楽を柔らかく見せてくれます。確かに今のご時世に、街のど真ん中にストリップショーのお店なんかがあると即摘発されそうですが、当時はそれも市民の娯楽に馴染んでいたのです。その合間に寸劇のごとく繰り広げられる深見たちの芸。芸人とは何かという哲学を、深見は時間をかけてたけしに教えていくのです。

 この作品には、涙を誘うシーンがいくつかあります。やはり師弟関係というのは状況により自ずと涙を誘われてしまう要素になってきます。尊敬していたはずの深見と意見が食い違っていくたけし。でも根本としては深見を心から尊敬している。何気ないですが、靴を用意するくだりは不思議と涙が出そうになりました。うまく言葉では表せられませんが、親が子の成長を感じる時もこういう涙が出るものなのでしょうか。僕には真相はわかりませんが笑

 結末はあまりにも虚しいですが、それらの経験を経て今のたけしがいるのでしょう。歳をとったたけしのメイクには驚かされました。遠くから見たらたけしそのもの。若い時はかなり棘がたっていましたし、今でも辛口コメントを繰り広げるたけしですが、そんなたけしでも深見なしではここまでなれなかったのではないでしょうか。こういう自伝的映画は本当に参考になるし何よりも面白い。量産化して劣化しては駄目ですが、もっとこういう作品が世に出てきても良いのではと思います。
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