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ジョン・レノン&オノ・ヨーコ ABOVE US ONLY SKYのGreenTのレビュー・感想・評価

5.0
あの伝説のアルバム『イマジン』がどう作られたかを通して、ジョン・レノンとヨーコ・オノの関係が美しく描かれるドキュメンタリーです。

ジョンとヨーコはビートルズ解散後、メディアやファンから逃れるために、イギリスはアスコットにあるティテンハースト・パークというところに引っ越すんですね。ここでまだ幼いジュリアン・レノンとボートで遊んだり、ヨーコとジョンがベッドでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるシーンなんかは、プライベートな映像でこのドキュメンタリーで初めて公開されたらしいです。

ジョンはこのティテンハースト・パークの家に、待望の自分のスタジオを建設し、『イマジン』のレコーディングはそこで行われるんですが、このシーンがいいんですよね〜。ミュージシャンが集まって(ジョージ・ハリソンもいる)、ジョンがピアノを弾きながら「ああだろ、こうだろ」と説明したり、「こうしよう、ああしよう」なんて自由に創作しているところが。

ヨーコはいつもジョンのそばにいて、詩を書いている。アイデアを出すシーンもあるし、『イマジン』を録るときは、ジョンがヨーコに「ブースに入って聴いて」って頼んだりする。

ジョンのヨーコ愛がすごい。ってか、昔から思っていたけど、これを観ると本当にすごい好きなんだなって思う。 “Jealous Guy” って曲を歌っているんだけど、つまりヨーコが好きすぎて嫉妬深い男になってしまう自分が情けない、でも好きなんだからしょうがないみたいなことを赤裸々に歌う。

この、ジョンがヘッドフォンつけてボーカル・パートを録るシーンが、エコーもなにもかかってない生声で、これがまたいいなあと思いました。

私は『イマジン』を聞くといつもマジで泣きそうになるんですけど、この詩がほとんどヨーコの作品だとこのドキュメンタリーで知って、ますます泣けてきました。

ジョンのアシスタントをしていたダン・リッチャーという男性がインタビューで言ってたんですけど、

「あれはヨーコの言葉だよ・・・。ジョンのことは大好きだけど・・・あれはヨーコの言葉だ。ヨーコがジョンを通して話しているんだよ。世間にはあまり知られていないことだけど・・・ヨーコと出逢った後、ジョンの言葉は、全てヨーコの言葉だ。ヨーコが教えた言葉なんだよ」

ジョン・レノンも1980年のインタビューで

「『イマジン』はヨーコの名前もクレジットするべきだったと思う。歌詞もコンセプトも、ほとんどヨーコから出たものだから。でもあの頃は、僕は自己中でマッチョだったから、何気にヨーコの功績を無視していた。でもあの曲はヨーコの書いた『グレープフルーツ』という本そのものだもん。あの本には「これを想像してごらん、あれを想像してごらん」ってのがたくさん出てくる。だから遅ればせながら、ヨーコの功績を認めるよ」

と言っている。

でもこれって良くあることだったんだろうなあ。荒井由実も、ジャニス・ジョプリンも、「女が書いた曲なんて、誰も聴かない」と言われて、男性の書いた曲を歌ってたって話だったもん。

そうそう、あと、狂信的なファンが訪ねてくるシーンがあるんだけど、この人はジョンの歌が自分に対して語られてるという妄想があるみたいで「こうこうこういう歌詞があったじゃないか」とか言うとジョンが「あれはヨーコが考えたんだ」ってところがあって、スタジオでも彼女は常に歌詞を書いていたから、ヨーコの言葉はかなり使われているんじゃないか。


ビートルズ・ファンには、「ビートルズを解散させた女」みたいな言われ方をしていたヨーコだったけど、私はこの人にすごい好感持ってて、なぜって、ジョン・レノンも劇中のインタビューで言ってたけど、ジョンはビートルズがもうイヤだったから、ヨーコを見つけたんだと思う。それは、例えば恋愛だってそうじゃん。新しい男が見つかったから別れるんじゃないんだよ。「この男・・・うーん」って思い始めるから次の男に目が行くんじゃん。

ヨーコはこの『イマジン』を書いたのは実は自分だって話に対して、

「私はもっと大きな目で見ていて・・・ジョンと私が出逢ったのは、この曲を演るためだったんだと感じている」

って・・・。ジョンと一緒にいるときから「実は私が書いたんだ」って主張するでもなく、ジョンを立てて、しかもこの人すっごいメディアの攻撃の対象にされたハズなのに、そこも黙って耐える。だけど、弱々しい感じでもない。でもジョンに甘えるときはすごく可愛い。

実は私、アメリカの大学にいた時、初老のプロフェッサーから「ヨーコに似てる」って言われて、すっごい傷ついたことがあったんですよ。だってー、私が知っているヨーコ・オノって、おばさんだったんだもーん。プロフェッサーは「え!あんなに美しい人なのに」って私が怒ったことが意外だったみたいだけど、私の日本の友達も、メールで言ったらみんな爆笑してたくらい、私は恥ずかしかった。

でもこのドキュメンタリー観ると、ヨーコってスタイルいいし、顔も、個性的だけどキレイな顔してるんだよな。なんたっておっぱいがすげーでかい(笑)。

でも私は別にジョンがヨーコの歌詞を盗作したとかそういうことを言いたいんじゃなくて、ジョンは、自分の言いたいことを表す言葉が見つからなかったんじゃないかなあと思うんですよね。それを持っていたのがヨーコだったんじゃないか。

だって、『イマジン』を書いたのがヨーコだ、って言われて聴くと、すごいしっくり来る。なんていうか、女性的だし、東洋的でさえある。あの、「みんな私のことをドリーマーって呼ぶかも知れない。だけど私だけじゃない」「いつかあなたも参加してくれるといいな。そしたら世界が一つになる」ってところ、謙虚なんだけど、「私だけじゃない、みんなそう思ってる」って周りの人のヒューマニティは固く信じているところとか。

「イギリスの白人男性にこの発想はなかったんじゃないか」とか言うと人種差別・性差別的かなあ?でもジョンが自分で言っている通り、「あの頃は、僕は自己中でマッチョだった」んでしょ?この頃、フラワー・チルドレンとか、反戦とか、世界はどんどん女性っぽくなっていったんだけど、男性は力の世界を教えられて生きてきたんだから、「自分も平和や優しいものがいい。そういう曲を書きたい」って思っても、そういう言葉を持ってなかったとしても不思議はないんじゃないかなあ。

まあいずれにしろ、このドキュメンタリーからはジョン・レノンよりもヨーコ・オノに感銘を受けた。ジョン・レノンの「ヴォイス」が日本人の女性だったなんて、自分が女性であること、日本人であることに誇りを持たせてくれる。
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