JunichiOoya

Billie ビリーのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

Billie ビリー(2019年製作の映画)
3.0
日本公開は72~73年くらいだから中坊だったか高校に上がったころだったかなあ、ダイアナ・ロスの『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』を大阪梅田のニューOS劇場で見たのは。
私自身のビリー・ホリデイについての情報、知見は、その後順次上書きされていったのだけれど、初体験のトラウマとでも申しましょうか、「ビリー・ホリデイ=麻薬撲滅運動のアイコン」っていう刷り込みができてしまっていて。
(そんな結構薄っぺらい映画だったのは間違いないんですけどね)

今回、ほぼ半世紀ぶりにスクリーンでビリー・ホリデイその人に再会。というか、初対面。
ティーンエイジャーだった私には埒外だった、彼女の艶っぽい歌声も堪能させていただいた。

薬物云々以前に、興行界の有象無象と人種(人色=colored)に翻弄され潰された天才芸人の話として引き込まれました。

ただ、導入されていた人工着色には?? 有色人種としての彼女の生を追いかけるのに、何故合成の「彩色」が必要だったんだろう?
それは第一次大戦(戦車や飛行機が初めて兵器として実用化された戦い)の記録映像を彩色した『彼らは生きていた』を見たときの違和感にも通じるしんどさ。

モノクロームで十分に存分に伝えられる事柄に何ゆえ色を付けなきゃならないんだろう。

もう一つは、元になる資料(主にインタビュー)を積み上げた白人女性記者の「死」についての言及が中途半端だったこと。思わせぶりな語りはあるのだけれど、例えば彼女の死因が「他殺」だったとして、そこに至る経緯をちゃんと説明できていないことで、全体があやふやな、いい加減な表現に堕してしまったんじゃないかしら。
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