Billie ビリーの作品情報・感想・評価

「Billie ビリー」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

ビリー・ホリディの生涯については、あまり多く特集されたことがないが、とにかく搾取され続けた人だった、という印象が深い。

この映画は、ビリー・ホリディの生涯を綿密にリサーチし続け、1979年に事故で亡くなったリンダ・リプナック・キュールという女性記者が集めた膨大な資料から、ビリーの生涯やその波乱に満ちた生活を辿るという面白い造りになっている。

実は、このリンダさんは、ビリーの取材をしている最中に、ビリーの著作権だったか、薬に関することだったかで深く関与していた男に脅され、殺されたのではないかとも読み取れる。

つまり、少ない利権のパイを巡って裏の世界を牛耳っている奴がたくさんいるってこと。

それだけ、ビリーの生きていた世界は、まともに生きることがいかに難しいか、黒人の置かれた(厳しい現実が、自分たちでマフィア化して強い奴しか生き残れないサバゲー状態にしてしまった)状況がいかに厳しいかを見せつける。

元々は、ボルティモアの貧しい家庭に生まれ、父親は不明、母親は彼女に売春させてまで金を稼ごうとした。そんな中、彼女に歌の実力があると知ると、ニューヨークへ移住。

しかし、付き合う男は、彼女を殴り、薬漬けにし、煩わしさを紛らわすために酒に酔う。ステージを酔ってぶち壊しにしたり、穴を開けたりすることも1度や2度ではない。

しかも、おそらく黒人女性が当時一人で生きていくことなんて、まずできない。そうなると自分を守ってくれる強い男が必要だ。そういう男は暴力を振るい、セックスが激しく、そういう基準で男を選び、寂しくなると、また男を欲するようになる・・・。

そして、その経験を歌にする。経験は真実だから、聞く人たちの心に響く。彼女は感情を歌に空気を伝って風のようにそっと乗せるのが抜群にうまい。こんな歌手は、世界広しといえども、日本のちあきなおみしか思いつかない。

彼女の歌が人気を呼ぶと、ますます男がたかり、彼女に暴力を振るい、薬でがんじがらめにして、男にすがっては捨てられる。弱い男はヤり捨てて、強い男を求めて股を開く。そんな生活が当たり前で、それをふっと歌詞にすると、その歌がまた売れる。

ビリーは「レディ」と呼ばれた。彼女に近寄れるのは、彼女がどっぷりとハマった黒人の非情なヒエラルキーの社会を支配できる、強い男しかいないのだ。


音楽業界で成功しているように見える女性がいかに歌がうまくて魅力的だったとしても、一般の人たちはもとより、業界人すら近寄ることが難しい。彼女もこの虚構に満ちた世界に固執してしまうなら、誰かが彼女を苦悩から救い出す事は難しいだろう。



彼女の歌う歌の歌詞は、全てさりげないが、事実に基づいたものだから、もっときちんと覚えておけばよかったな。

ワイドショーのネタになりそうな話題はたくさんあったが、本質はそこにない。

彼女は自分なりに自分の人生を生きたけれど、それはその世界が彼女をそこに閉じ込めることを意味していたことが深く印象に残って、やりきれない。

最後に結婚した男にも暴力を振るわれ、別れようとした矢先にビリーが亡くなり、遺産は全てそのバカ男が相続。彼女は亡くなった時にはたったの750ドルしか持っていなかった。

その20年後。彼女の生涯を追っていた女性記者リンダにも、その深い闇が訪れる。金を持った黒人にたかるどうしようもない毒は、近寄るものを全てぶち壊しにしてしまう。

これは、ホイットニー・ヒューストンの映画でも改めて確認できることだが、ダイアナ・ロスやビヨンセだって、うまく生き残っているじゃないか。彼女たちとの違いはなんなのか。

もしかしたら、後ろ盾の影響力だと思うが、バランスをとっていくのは、並大抵のことではない。闇の深さは到底予測もつかないが、ビリーの囁くような声は、今夜も優しく耳に響く…。
Kacchoboi

Kacchoboiの感想・評価

4.0
映画によって真実が描かれるって
本当に素晴らしい。
ビリーの歌声は、客も同業者も人種関係なく魅了していた。圧巻の歌声とパフォーマンスをスクリーンで見れて良かった。
gripari

gripariの感想・評価

3.0
類い稀な才能は人を惹きつけるが、内にも外にも毒を放つ。近づく者すべてをのみ込む負のオーラ‥
でも時を経て、そんな才気こそが生きる力を与えてくれたりする。
アメリカという国
人種差別という屈辱
時代と音楽
酒と麻薬と暴力と

様々なワードが激しく飛び交う
そんな映画

生きる辛さも悦びも
何もかも音楽で表現する
その刹那の感覚

正常と異常との境に芸術があった
Teijiji

Teijijiの感想・評価

4.1
辛く、切なく、哀しい映画だった。

ビリー自身はなぜ若く名をなしたミュージシャンは短命なのかとの問いに「私達は1日で100日分生きたいのよ」と言っているが、本当のところは
ヒットへのプレッシャー、操られ、利用され、踏み躙られる人間性、過度のドラッグ摂取、などが大きな要因だろう。

その後に続く、若くして亡くなった女性ボーカリスト、ジャニス、ホイットニー、エイミーらも同じような運命を辿ってしまうし、マイルスを始め多くのジャズプレーヤーも多くの人がヘロイン等で苦しみ、命を落とした人も少なくない。

特にビリーの生きた時代はグリーンブックが公然と認められていた時代だ。
黒人の人権なんてなかったも同然だったろうし、黒人同士の団結やプラックパワーが叫ばれる以前の時代だけに、黒人コミュニティ内でも権力争い、騙し合いなんかも日常化だったろう。

そんな時代を生きていくためには倒錯的なSEX.
ドラッグ、酒、など逃げ場が必要だったのだろう。
そのせいか後年の彼女は実年齢よりも老けて見えていた。

だが、いつものステージ衣装とは違う、シンプルなニット姿で「奇妙な果実」を歌う彼女は美しく見えた。

そして、冒頭と最後に語られるこの映画の元となった膨大なインタビューを行い、長年にわたってビリーの取材を続けてきた美しい白人女性ジャーナリスト、リンダの死がより憤りのない影を落とす。
ビリーホリデイは最高の女だ。
ビリーの生涯と、彼女を取材して亡くなったリンダの生涯が重なるように終わる。
事実は小説より奇なり。

2021年 104作目
Akari

Akariの感想・評価

3.5
渋いけどなぜかクセになるビリーホリデーの声!
strange fruit歌ってるとこカラーで初めて観れたのがよかった
なんか心に響く
やっぱり波乱万丈な人生
女性ジャズヴォーカリスト御三家のひとりとして伝説と化したLady DayことBillie Holidayの44年の生涯を追ったJames Erskine監督のドキュメンタリー作品。

ドキュメンタリーと謳ってるのに、なぜか
監督のジェームズ・エルスキンは脚本にもクレジットされている謎…。

脚本ではなく編集なんじゃないの?
あなたがインタビューされる人の台詞を書いた訳じゃないでしょうに…

『不都合な真実』の1も2でも、脚本にアル・ゴアの名前がクレジットされてて、なんで?と思ったけど…単純に脚本にクレジットされたら、脚本料として金が何%か入るからじゃないの?それを見越して脚本にクレジット入れろ!と言ってそうで…

ドキュメンタリーだからねぇ…脚本も何もないと思うんだけど。脚本の定説というか、言葉の概念が滅茶苦茶になっている気がする。

しかもジェームズ・エルスキン脚本監督となっているが…その中身はと云うと、ビリー・ホリデイに魅せられた女性ジャーナリストLinda Lipnack Kuehlが、8年かけて関係者にインタビューを敢行し125本にも及ぶカセットテープに録音して集めたものを切り貼りして繋いでいるだけ。

当然、リンダ・リプナック・キュールは自らの手でビリーの伝記を完成させたかったわけだが、執筆の最中に38歳の若さで不慮の死を遂げる。この謎の死も大いに裏がありそうなのだ。

本作はビリーの伝記を書くべくしてビリーを追い続けながらも若くして死んでいったリンダ・リプナック・キュールと、壮絶な生涯を送ったビリー・ホリデイという二つの人生をシームレスに並行して追うのだが…。

このシームレスに描き出したことこそが失敗の大きな要員だと感じる。

ビリーを描きたいのか?
ビリーを追ったリンダを描きたいのか?

いや、両方でしょ?と欲張った結果…どっちつかずでバラバラになった印象を受け、ただただ分かりにくいという始末に。

ビリー・ホリデイ愛好家なら、また違う印象かもしれないのだが…。
そこまでビリー・ホリデイの背景も知らずに、単純にこのドキュメンタリーでビリー・ホリデイのことを深く知りたいと思ってた私からすると…焦点がブレてしまって非常に見にくい。

ビリーを追ったジャーナリストであるリンダの謎の死を追うのか…それともビリーの素顔をインタビューから炙り出すのか…。
そのどちらかにした方が焦点が絞れて良かった気がする。

こちとらビリーのことも知らない上に、さらにもう一つビリーを追っていたリンダのこともシームレスにやられると情報過多になってしまい、いまビリーのことなのか、リンダのことなのか、シームレスどころかバンバン混じってしまい理解できない。

なんでもっとシンプルにしなかったのか…

折角、映像化してるのに…なんのために映像化したのかも不鮮明。映像化の利点を全く活かせてない。監督は映像化の長所が分かってないんだと思う。

ほぼほぼ静止画の写真と、テープレコーダーを回す手と、テープが回るところの動画ばかり…。

これでは何のために映像化したのか…

音声インタビューの素材しかないから、まぁ仕方がないのかもしれないけど…それでも、もう少しやりようあったと思うけど。

結局は、周囲の人物の証言記録を並べただけで、それも人によって言ってることが様々だからねぇ。全く人物像が掴めない。

まぁこういう人だと制作側が決めつけないで、見てる人に委ねようとしてるのだろうけど、ビリーに縁もゆかりもなかったら、全く分からないよ。

こういうドキュメンタリーは一番やってはいけない見本のような作品だと思う。

感じることもできないなんて…。


そもそもビリー・ホリデイが歌ってる途中なのに、そこにインタビューの台詞を被せる時点でリスペクトないだろ?

カラーで歌ってるところを大音量で見たいのに…なんでそこにインタビュー被せるの?アホちゃうか?

伝記本の執筆に8年かけて、未完のまま死んでいったリンダの気持ちも汲んでない。全て蔑ろにしてしまっている。


あと劇場の非常口の電気を消してくれよ。
法的に消せないのかもしれないけど、カバーかけてもう少し暗くするとか…なんかあるでしょ?一番席数の少ない小さいシアターだったから、めちゃくちゃ明るかった。

会場に対しての非常口の掲示板の大きさが気になった。比率がおかしいよね?古い劇場だから仕方ないけど…

車用のスモークを貼るとか、なにかやりようがあると思うので、やってほしい。



ーなぜ女性のジャズ歌手は短命なのか?

ビリー・ホリデイ
「私たちは1日で100日分生きたいの」
ひる

ひるの感想・評価

3.9
BILLIEだけでなく、彼女を追ったインタビュワーにも着目する、二重のドキュメンタリーとは珍しい。
ゲル

ゲルの感想・評価

3.6
音楽ドキュメンタリーなのに、すごく悲しい物語。
好きなこともしたのだろうけれど、利用され、搾取されまくった人生。
当時とは貨幣価値も異なるであろうが、それにしても遺産の金額のあまりの低さに驚く。
ビリー・ホリデイを取材していたジャーナリストのリンダの人生も重なり、ミステリー色の強い作品。
ビリー・ホリデイはだんだん破滅に向かって行き人生を閉じた印象だが、リンダは姿の見えない何者かによって闇に葬り去られた印象でより恐ろしい。
リンダについて語れるのはここまでが限界ということか。
家族が気の毒。
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