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くれなずめの8637のレビュー・感想・評価

くれなずめ(2021年製作の映画)
4.3
もう...泣かせるんじゃないよ、笑わせてくれ!
提示した過去から逃げてはならない、それが現実。だけどこの映画にはそういうリアリズムを捨てる瞬間があり、僕らはスクリーンに不可思議に映るそんな非現実を観て感動してる。対し僕は自問自答を問いかける。それが答えか?この答えは良か悪どちらで捉えようか?考える間も無く涙は溢れていた。傑作。

不毛は世界最大級の平和。昔の記憶の応酬はこの6人によってやっと補完される。青臭いなと俯瞰しながらも、自分も過去に好きな人を聞かれ照れながら答えて周りにヒューヒュー騒がれた事を思い出し、恥ずかしくなった。
ずっと主役だけを捉え続けるのが松居大悟の作品だと思う。主軸である結婚式のシーンはほぼないし、カラオケボックスで介入してきたリア充も絶対に彼目線では追わない。だからこそあんなに6人の長回しができる。
彼らの間が好きなので、現在のパートでは最後まで長回しを貫き通して欲しかった気持ちはある。

全体通して"一度舞台上で演じ成功した雰囲気"と"映画だからできた改変"のハイブリッドで、そこにはどんな場面でも相乗効果を感じる。
二つの総合芸術の融合だからこそ、威力は強い。正直多少のネタバレを知りながら行ったが、そんなちっぽけな物語ではなかった。

難点はやはり終盤。あの光景を見せるための前半の青臭さなんだと分かった時、醒めてしまう人もいるのではないだろうか。
だからこそ全てを纏めるアンサーとしての『それが答えだ!』の意味の持たなさに泣く。本編でも言うように、"答え"を連呼しながら"答え"を言わないこの曲。だけど、今いる大人も、置いてきた未成年も、暮れず照らす夕陽のように温かく形容してくれている。思いの伝え方がぶっ飛んでいたから、多少ビビっただけなんだよ。
松居大悟は直球で想いをくれる人なんだとも再確認した。


追記:あーなんて言うのかな、この胸のモヤモヤは...あまーい、にがーい、そしてグッとこみ上げる想い。くり返すこのエンドレスな日々にフト頭をよぎるものは...

『       』
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