ひろゆき

ライフ・ウィズ・ミュージックのひろゆきのレビュー・感想・評価

2.5
銀幕短評(#699)

「ミュージック」(原題)
2021年、アメリカ。1時間47分。

総合評価 50点。

容赦ない いいかたをすれば、これは自閉症者について 小ぎれいなハッピーエンドにうまくもっていったフィクション(作り話)あるいは おとぎ話ですね。ということになります。

劇中、ミュージカル(音楽劇)のかたちを取って、ミュージック(自閉症者である妹の名)の心中の喜びや希望を表現しますが、これに対しては韓国映画「オアシス」での同様の手法を想起します。わるくはないのですが、本作ではミュージカル パートの尺が あまりにも長すぎて、肝心のストーリーの展開が なおざりにされているのは たいへん残念です。深みのない うわすべりでご都合主義のものがたり。障害者やその家族への平凡な同情を買い、そして障害につよく立ち向かう(と見える)すがたに安易な感動や賛同をさせるはなし。観者は話しがうまく納まったものとして、さいごにほっと胸をなでおろす。ピリオド。


「僕が跳びはねる理由」という、じっさいの自閉症児を紹介している すてきなドキュメンタリ映画があるのですが、そこでの感想文を一部再録してみます。

「まずいえることは、自閉症のひとが “健常者”と同様の社会生活をおくることは、その “能力”の面できわめてむずかしい。自閉症は “病的な疾患”(あるいは “形質”と呼ぶべきかもしれない)であり、それは治癒しないし寛解もない。かれが彼女が安全に健全に生活を送るためには、健常者の、とくに親の献身的なサポートを必要とする。映画で取材されている自閉症者は、その誰もが親の強力な愛と庇護のもとにある。しかし世の中の自閉症者のなかで そういう恵まれたひとは ひとにぎりであろうことは、容易に想像がつく。」

「冒頭に及び腰のいいわけを書きましたが、この感想文にこれといった結論はありません。つまるところ、かれらの福祉をどうするかという議論に、ただただとどまってしまう。教育にも限界があるのだから。庇護する親もいずれは 老い、先行くのだから。ちょっとわたしの手にあまるテーマの映画です。「じぶんの手にはあまる」という結論をみちびくひとが、大半なのではないでしょうか。残念なことです。」


障害者をよく理解し、健常者が かれらとうまく共存することは、社会的に重要なテーマですが、この映画はその理解のための ごく入門編(小学校低学年レベル)ですね。中学校レベルくらいかと期待したのですが。ここは福祉について真剣に考える必要があるように思います。愛だけでは解決しないものごとも たくさんあるから。
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