ShinMakita

キャラクターのShinMakitaのネタバレレビュー・内容・結末

キャラクター(2021年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

有名漫画家のアシスタント山城圭吾は、大好きなホラー/サスペンス系の作品で独り立ちしようと奮闘中。婚約した恋人・夏美の応援を受けて新作を描きあげ編集部に持参するが、その場であえなく却下されてしまう。編集曰く、画力は抜群だが人物に魅力がない…キャラクターが無いとのこと。バッサリ斬られ意気消沈した圭吾は、才能の無さを痛感してマンガから足を洗うことを決意。最後の仕事として先生が要求する「普通の家」のスケッチを描きに住宅街へ向かった。めぼしい家の前で微細なスケッチ画を完成させた圭吾は、ふとしたことで家の中に足を踏み入れてしまう。そこで目にしたのは、一家4人の惨殺死体だった。

この一家4人殺しを捜査する神奈川県警が有力容疑者・辺見を逮捕し、事件解決後…山梨との県境にある山道で、またも一家4人が殺害される事件が起きた。先の事件で捜査に加わっていた県警一課刑事、清田と真壁は現場を調べ、2つの事件が同一犯によるものとの心象を得た。そして、この事件の手口があるマンガと酷似していることを知る。そのマンガとは、サイコキラー〈ダガー〉を主人公にした「34(さんじゅうし)」。一家4人殺しの第1発見者・山城圭吾がブレイクするキッカケになった人気ホラーコミックだった…


「キャラクター」

以下、NETABARE NO OWARI。


➖➖➖

売れないマンガ家が凶悪殺人事件の現場と犯人を目撃し、これを題材にマンガを描いてしまったら大ヒット。おかげでその犯人に付きまとわれて…というサスペンス。体験談を描いてしまってトンデモない目に遭うという点では先日観た「ヒットマンエージェント:ジュン」みたいなコメディに振り切ることもできるし、作家と殺人鬼の共存関係という点では「二流小説家」みたいなミステリーに振ることもできるんですよね。でも本作は、余計な部分が一切ない王道のスリラーになっています。オリジナル脚本でここまでガッツリとゴア描写してくれるのも素晴らしいし、ストーリーの破綻もないし(時間経過がやや曖昧だけど)、ハズレではありません。そりゃ確かに警察が無能に描かれてはいるけど、韓国よりはマシでしょ。

警察コンビが圭吾の住居に行くシーンでエントランスから部屋までやたら長い時間かけていたり、両角がベビーベッド購入を目撃していたりというのは、良く出来た伏線。圭吾の複雑な実家描写も最初は違和感だけで、後半意味を持たせる(両角の電話まで説明セリフ無しだったのを評価)のも良かった。冒頭、狭い部屋の窓ショットがラストの病室の窓に繋がる演出も上手い。


クライマックス、圭吾が凶器を振り上げるあのシーンこそが本作のテーマ。圭吾が内に秘めていた殺人衝動が表に出てしまう瞬間ですよ。キャラクターとは、結局最初から最後まで、圭吾の内面の話なんですよね。ラスト、ベッドサイドにあった清田の似顔絵…これ見てホッとしたよ。あ、圭吾は闇落ちしねーなと。家具屋の外から夏美を見ている視点など、続編フリもあるけど、これは単品で良く出来た作品。圭吾には、ぜひ清田をモデルに「ゾク上がりの俺が県警捜一の刑事になっちゃった話」というタイトルでマンガ描いて欲しいもんだ。


そういえば、今回役者が凄いですよ。橋爪淳なんか時代劇の頃しか知らないから驚いたし、小島聖が(義理の、とはいえ)菅田将暉の母親役だし、隔世の感。そして1番驚いたのは、「家族ゲーム(ドラマ版)」の松田洋治! 長渕に小突かれてたあのチビっ子があんな役で!!
ShinMakita

ShinMakita