松山ケンイチ、東出昌大、柄本時生、木村文乃、４人の自然な演技が素晴らしい。
自分が心底好きな事に溺れる程のめり込む幸せが作品全体に滲み出ている。同じ勝てないボクサーを描いた『アンダードッグ』（前後編）よりも、私は胸に刺さった。
何よりも瓜田（松山ケンイチ）の人柄に惚れました。
小川（東出昌大）の試合を見ながら檄を飛ばす姿、樽崎（柄本時生）の試合を遠く鋭い眼光で見つめる姿、その瓜田の背中に強い闘志と信念、熱い魂が見える。
心底ボクシングが好きで、努力家。けれど、試合には勝てない。
ジムで後輩になじられ、悔しくて無念で屈辱感に押し潰されそうな気持ちを隠して、穏やかに受け流す。いつ我慢の限界が来てキレるかと、ドキドキしながら観ていたけど、瓜田の感情が爆発し激昂する事はない。
誰よりも自分自身がいちばん悔しくて情けなく思っているのだから。。。
自分の負け試合後、小川（東出昌大）の試合を千佳（木村文乃）と観戦していて、彼女が離席した時、独りうなだれて頭を抱える瓜田の後ろ姿がものすごく辛い。
優しさゆえに、もう一歩が踏み出せず、初恋の女性も親友に取られ、大好きなボクシングさえも勝てない。
あぁ、一試合でもいいから気持ち良く勝たせてあげたかったなぁ。心底思った。
樽崎のおばあちゃんとのシーンも良かった。ボクシングだけのスポ根ドラマではなくて、その人間模様がとても深い。描く眼差しが優しくて、ドラマ全体がとても慈悲深く感じる。
瓜田が言う「お前が負ければ良いと思っていた！」吐露するセリフも、それを「分かっていた....」と受ける小川、嫉妬、意地、情け無さから発した言葉だと分かっている。それだから、信頼関係の強さを感じる。
1時間47分、無駄なシーンもなく、登場人物誰一人もおざなりにせず、じっくりと描き切ってるところは凄くて心打たれた。
逆に言うと、たったこれだけの時間でもこんなに厚みのある作品は充分に出来るんだと言う証だと思う。
ラスト、市場でひとり、シャドーボクシングをするシルエットは、それでも好きで諦めキレない瓜田の気持ちが滲み出ていて素敵で、とっても格好良くて、ずっと観ていたかった。
エンディング、竹原ピストルの歌にも痺れました。
凄く面白かった。
