こなつ

人生は、美しいのこなつのレビュー・感想・評価

人生は、美しい(2022年製作の映画)
3.8
韓国のミュージカル作品は初めてだった。用事を済ませたあと時間が出来て、大好きなミニシアターで上映していたので思わず鑑賞。

あまりレビューの評価も良くないので、期待はしていなかったのだが、私は結構ハマってしまった。「7番層の奇跡」のリュ・スンリョン、数々の韓国のテレビドラマで安定した演技を観せるヨム・ジョンア、俳優としては韓国を代表する2人だったが、歌ったり踊ったり本当に出来るの?と半信半疑で鑑賞。ミュージカルのプロではないから、感動するほどの歌や踊りが観れたわけではない。最初は、台詞を言っているのかと思うと突然歌い出したりして、ちょっと変な流れで戸惑った。

典型的な亭主関白の夫ジンボン(リュ・スンリョン)と思春期の生意気盛りな息子と娘にうんざりしながらも、健気に尽くしてきた平凡な専業主婦セヨン(ヨム・ジョンア)。ある日、自分の命が残り僅かと宣告されたセヨンは、学生時代の初恋相手との再会を熱望。夫のジンボンに一緒に探して欲しいと頼み、2人で恋人探しの旅に出る。

韓国の懐かしいヒット曲が流れているらしいが、馴染みがなく歌や踊りにはあまり魅力を感じない。若い人や長く結婚生活を経験していない人には物語も響かないかもしれない。

妻が夫や子供の世話をするのは当たり前、ありがたみなど感じずに生活していて、感謝の欠片も感じられない。でもそんな妻が突然いなくなるとわかったら、、、言葉に出来ないが途方に暮れる夫ジンボン、事実を知った息子と娘の母への気持ち、ずっとそばにいると思っていたらわからなかった家族の本当の気持ちがとても切ない。

セヨンは死期が迫っているとは思えないほど、肌の艶が良く輝いていて不思議な感じがしたが、初恋の人に会えるかもしれない嬉しさと昂りからだと解釈しよう。

その初恋の人の若い頃を演じたオン・ソンウは、元K-POPグループWanna Oneのメンバー。彼の主演した韓国ドラマ「18歳の瞬間」がとても好きだったので、久しぶりに観ることが出来て思わず嬉しかった。息子役のハ・ヒョンサンも人気のシンガーソングライター。

物語自体は家族の優しさや絆を強く感じるストーリーでわざわざミュージガル仕立てにしなくても、、とは思ったが、重い題材を歌と踊りで明るくサラッと語る雰囲気。空気みたいな存在でなれ合いになっているような夫婦生活でも、2人が出会った頃のときめき、2人が築いて来た長い道のりを振り返った時、そこにはかけがえの無い美しさがある。泣けなかったというレビューが多い中、ラストは涙が止まらなかった。夫について思うこと、子ども達について思うこと、自分について思うこと、時を共に経てきたからよぎる悲喜こもごもの思いが胸を熱くした。
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